Pythonは、近年とても人気のあるプログラミング言語です。
得意分野の一つにアプリ開発があり、たとえばYouTubeやInstagramなど、数多くのWebアプリ・スマホアプリがPythonによって開発されています。
Pythonによるアプリ開発にトライしてみたい方、仕事としてPythonによるアプリ開発に興味のある方、中にはそういった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、「Pythonによるアプリ開発」に焦点を当て、その基本的知識や具体的手順などを解説します。
プログラミング経験のない方にも理解しやすい内容になっていますので、ぜひお読みください。
Pythonとは?
Pythonとは、オランダのプログラマー、グイド・ヴァン・ロッサム(Guido van Rossum)氏によって開発されたプログラミング言語です。
1991年にリリースされました。
主な特徴としては、文法がシンプルで分かりやすいこと、AI系のライブラリが充実していること、便利なフレームワークが豊富にあることなどが挙げられます。
※ライブラリとは、汎用性・利便性の高いプログラムを利用しやすいよう部品化したもの
※フレームワークとは、「ログイン機能」「検索機能」など、頻繁に使用される機能の完成品あるいは半完成品のプログラムを提供してくれるツールのこと
Pythonは、多くのプログラマー・エンジニアから高い評価を得ており、オランダのTIOBE Software社が月次で発表する人気プログラミング言語ランキング「TIOBE Index(2023年6月時点)」では、堂々の1位となっています。
Pythonが得意とする開発分野
ここでは、Pythonが得意とする開発分野を4つ紹介します。
Webアプリ
Webアプリとは、Webブラウザを通して使用するタイプのアプリケーションのことです。
Pythonは、Webアプリ開発に活用できるライブラリ・フレームワークが充実していることから、Webアプリ開発によく用いられています。
スマホアプリ
スマホアプリとは、スマホにインストールして使用するタイプのアプリケーションのことです。
Pythonは、スマホアプリ開発に活用できるライブラリ・フレームワークが充実していることから、スマホアプリ開発によく用いられています。
組み込みシステム
組み込みシステムとは、テレビやエアコン、自動車、スマホといった機器・デバイスに組み込まれている比較的小さめなコンピュータシステムのことです。
組み込みシステムの開発では、C言語やC++などがよく用いられていますが、Pythonはそれらと連携しやすいため(たとえばPythonからC言語の処理を呼び出すことができるなど)、一緒に用いられることが多いです。
データ分析システム
Pythonは、たとえばスクレイピング(Web上から特定の情報のみを抽出する処理のこと)など、データ分析システムに活用できる便利なライブラリが充実していることから、データ分析システム開発によく用いられています。
Pythonが不得意とする開発分野
ここでは、Pythonが不得意とする開発分野を3つ紹介します。
基幹システム
詳しいところは後述しますが、Pythonは実行速度が遅いため、企業の基幹システムなど、大量の情報を扱うシステムの開発には向いていません。
ゲーム
Pythonは実行速度が遅いため、たとえばシューティングゲームやアクションゲームなど、大量の映像データを扱うシステムの開発には向いていません。
デスクトップアプリ
デスクトップアプリとは、パソコンにインストールしてデスクトップ環境で使用するタイプのアプリケーションのことです。
Pythonでもデスクトップアプリ開発は可能ですが、特にPythonで開発するメリットはありません。
JavaやC#など、他にデスクトップアプリ開発を得意とするプログラミング言語があり、一般的にはそちらが選ばれています。
Pythonによるアプリ開発
Pythonが得意とする開発分野および不得意とする開発分野をみてきました。
本記事のテーマは、Webアプリ開発とスマホアプリ開発で、この2つはどちらもPythonが得意とする開発分野です。
より詳しくみていきましょう。
PythonでWebアプリ開発
Pythonが、Webアプリ開発を得意とする理由の一つに、「Django(ジャンゴ)」「Flask(フラスク)」「Tornado(トルネード)」「(Bottleボトル)」といった便利なフレームワークの存在が挙げられます。
最も人気の高いフレームワークが、2005年にリリースされたDjangoで、デフォルトでWebアプリ開発に必要な機能が一通り揃っています。
実は、世界的に有名なYouTubeやInstagramなども、このDjangoによって開発されています。
Pythonでスマホアプリ開発
Pythonが、スマホアプリ開発を得意とする理由の一つに、ライブラリ「Kivy(キビー)」の存在が挙げられます。
Kivyは、2011年にリリースされたライブラリで、AndroidとiOSどちらでも動作するアプリの開発が可能で、タッチパネルにも対応しています。
Kivyを用いると、初心者でも簡単にスマホアプリを開発することができます。
※後ほど、その具体的手順を解説いたします。
Pythonによって開発されたアプリの例
ここでは、Pythonによって開発された代表的なアプリを4つ紹介します。
なお、全てがWeb版もスマホ版もあるいわゆるハイブリッドアプリです。
YouTube
YouTube(ユーチューブ)は、Google社が提供する動画共有サービスです。
世界中で利用されており、2005年のサービス開始以降、人気が衰えることがありません。
Instagram(インスタグラム)は、Meta社(旧Facebook社)が提供するSNSです。
近年人気のあるSNSの一つで、写真や動画の投稿をメインとしています。
Evernote
Evernote(エバーノート)は、Evernote社が提供する多機能メモサービスです。
文字はもちろん、画像や動画、位置情報なども記録することが可能であり、幅広い用途で活用できます。
Uber Eeats
Uber Eeats(ウーバーイーツ)は、Uber社が提供するフードデリバリーサービスです。
どこにいてもお気に入りの飲食店の宅配メニューを注文することが可能で、宅配業者ではなくUber社と契約した一般の方が宅配するシステムになっています。
Pythonによるアプリ開発のメリット
ここでは、Pythonでアプリ開発をするメリットを4つ紹介します。
初心者でも学びやすい
Pythonは、文法がシンプルで理解しやすいため、初心者でも習得しやすいプログラミング言語です。
可読性が高い
Pythonは、コーディング規約が細かく定められており、それに違反するとエラーが発生する仕様となっているため、誰が書いても同じようなコードになります。
実行するOSの種類を問わない
Pythonは、実行するOSを問わないプログラミング言語で、WindowsやmacOS、Linux、Android、iOSなど、あらゆるOS上で動作します。
AI系ライブラリが充実している
Pythonには、機械学習やディープラーニング、画像認識など、AIに関するライブラリが充実しており、「AI系開発といえばPython」と言われるほど不動の地位を得ています。
Pythonによるアプリ開発のデメリット
ここでは、Pythonでアプリ開発をするデメリットを2つ紹介します。
実行速度が遅い
Pythonの実行速度は早いとは言えません。
プログラムというものは、実行する際にコードを機械語(コンピュータで読み込める形式)に変換する必要があり、その方式には次の2つがあります。
インタプリタ型:プログラム実行時にコードを1行ずつ機械語に変換する
コンパイル型:プログラム実行前に全コードをまとめて機械語に変換する
Pythonは、インタプリタ型であるため、基本的に実行速度は遅くなります。
ライブラリ・フレームワークの日本語情報が少ない
Pythonには、便利なライブラリ・フレームワークが豊富にあるものの、そのドキュメントは英語で書かれたものばかりで、日本語情報が少ない傾向があります。
Pythonによるアプリ開発の手順(Androidアプリを例に)
Pythonに関する知識を深めたところで、いよいよここからはAndroidアプリを例にアプリ開発の手順を解説します。
STEP1:Pythonのインストール
まずは、Pythonの公式サイトからPythonをインストールします。
STEP2:統合開発環境のインストール
Pythonをインストールしたら、続いて統合開発環境をインストールします。
統合開発環境とは、プログラミングを行う際に必要なソフトウェアを統合し、一つのソフトウェアとして使用できるようにしたものです。
プログラミングを行う際に必要なソフトウェアの例:
・エディタ:コードを記述する
・デバッガ:デバッグ(バグやエラーの発見)を支援
・バージョン管理ツール:コードのバージョンを管理
各々のソフトウェアを用意する方法もありますが、一般的には統合開発環境を使用することが多いです。
Python開発で使用する統合開発環境としては、Microsoft社の「Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)」がおすすめです。
STEP3:ライブラリkivyのインストール
統合開発環境をインストールしたら、スマホアプリ開発を簡単にしてくれるライブラリkivyをインストールします。
STEP4:プログラミング
kivyをインストールしたら、実際にプログラミングを行います。
インターネット上にはさまざまなサンプルコードがありますので、必要に応じてそちらを参考にしましょう。
STEP5:パッケージング
プログラミングが完了したら、パッケージングを行います。
パッケージングとは、作成したプログラムをAndroid端末で動作する形式に変換することを言います。
kivyを用いて作成したプログラムをパッケージングする場合、一般的には「Buildozer(ビルドーザー)」と呼ばれるツールが使用されます。
STEP6:Android端末で動作確認
最後にAndroid端末で動作確認を行います。
実際に動作をさせるとエラーが発生する場合もありますので、必要に応じてプログラムの修正を行いましょう。
期待通りに動作することを確認できれば終了です。
Pythonによるアプリ開発の学習方法
ここでは、Pythonによるアプリ開発の学習方法を3つご紹介します。
書籍を活用する
最も手軽なのが、書籍を活用して学習する方法です。
どこでも学習できますし、費用を抑えやすいです。
学習サイトを活用する
書籍の次に手軽と言えるのが、学習サイトを活用して学習する方法です。
スマホやタブレット型端末などがあればどこでも学習できますし、学習の進捗管理もできます。
プログラミングスクールに通う
費用は高めになりますが、プログラミングスクールに通って学習する方法もあります。
よく分からないところがあれば講師の方に質問できるので、短期間でのステップアップが可能です。
中には転職サポートをしてくれるプログラミングスクールもあります。
Pythonやアプリ開発に興味のある方からよくある質問
最後に、Pythonやアプリ開発に興味のある方から多く寄せられる質問にお答えします。
Pythonに将来性はある?
→十分にあります。
Pythonは、人気プログラミング言語ランキング「TIOBE Index」で、安定して上位にランクし続けるほど人気のあるプログラミング言語です。
また、これからAI社会がより進んでいくと考えられるため、AI開発を得意とするPythonはより需要が高まっていくと考えられます。
Python系アプリ開発エンジニアは高収入を目指せる?
→十分に目指せます。
PythonはAI開発を得意としていますが、AI開発では高度なスキルや思考力を求められることが多いため、高単価求人・高単価案件が多い傾向にあります。
自分の成長次第で、高収入を目指せるでしょう。
アプリ開発に強い企業は?
→ モンスターラボ、フェンリル、bravesoft(ブレイブソフト)などが挙げられます。
モンスターラボ:
・世界15ヵ国に拠点を置く
・トップクラスのスキルを持つ人材を積極的に採用
・サイバーエージェントのブログサービス「アメブロ(Webアプリ)」などを手がけている
フェンリル:
・UI・UXデザインに強みを持つ
・ユーザー目線に重きを置く
・JR東日本の決済サービス「モバイルSuica(スマホアプリ)」などを手がけている
bravesoft:
・2009年という比較的早い時期にアプリ開発をスタート
・エンタメ系の実績が多い
・動画配信サービス「TVer(Webアプリ)」などを手がけている
まとめ
この記事では、Pythonによるアプリ開発に焦点を当て、その基本的知識や具体的手順などを解説しました。
Pythonはアプリ開発を得意とし、また初心者でも取り組みやすいプログラミング言語です。
アプリ開発にご興味のある方、この記事で紹介した内容を参考に、ぜひアプリ開発にチャレンジしてみてください。