現代のデジタル時代において大きな役割と責任を担う「データサイエンス」。
ただこの分野は現代で急激に拡大された技術ということもあり、名前しか聞いたことがない方や、そもそも聞いたことがないという方も多いです。
この記事では、そのデータサイエンスの本質を探り、具体的な内容や将来性、さらには実際の活用事例について紹介します。
本記事を通してこの職種に興味をもってもらえたり、もしくはそのきっかけになれば嬉しく思います。
そもそもデータサイエンスとはどんなもの?
データサイエンスは、大量のデータから意味を見つけ出し、価値ある情報を抽出するための学問です。
主に数学や統計学、プログラミング、解析技術を組み合わせて、ビッグデータから価値ある情報を抽出します。
一連のプロセスを通じてパターンや傾向を発見し、将来予測や意思決定に活かすことが仕事です。
この分野はマーケティング、医療、金融、交通、エネルギーなどあらゆる領域で応用されています。
データサイエンスの可能性はこれからも高まるので、データ駆動型の社会において不可欠です。
データサイエンスが着目されつつある理由
データサイエンスがいま突如注目を浴びていることには、理由があります。
それらを順番に見ていきましょう。
ビッグデータの爆発的な急増
ビッグデータが爆発的に急増したことが、着目されている理由のひとつです。
爆発的な急増とは具体的に、
- デジタルデバイスの拡大でインターネットがより身近になった
- IoTやAIといったモダンな技能が続々と生まれた
などによって、誰でも手軽にビッグデータを集めたり、分析できるようになったということ。
ビッグデータには、
- 顧客の行動パターン
- トレンド
- 市場の動向
など貴重な情報が収められていますが、それらを有効に利用するには一定の技能が必要です。
こういった背景で、データサイエンスが着目されています。
機械学習や人工知能の進歩
機械学習や人工知能といった、いわゆる「AI」の進歩が止まらないことも、着目される理由のひとつとなっています。
機械学習は、コンピュータがデータから自動的に学習し、予測を行う技術。
人工知能は、機械学習やその他の手法を用いて、人間の知的なタスクを模倣するシステムの総称です。
これらが進んだことによって、データサイエンスはより強力な予測モデルや高度なパターン認識を再現できるようになりました。
例えば機械学習を使った画像や音声の認識は、自動運転や音声アシスタントで大きな進展を遂げています。
このように技術の進歩は、データサイエンスの応用範囲を広げています。
ビジネスにおける統計や分析の必須化
現代のすべてのビジネスは、統計や分析がもはや必須かつ最重要となりました。
これらを大いに活用することで、企業は市場トレンドや顧客行動のパターンをつかみ、次なる正しい対策を見極められます。
データサイエンスは、大量のデータから価値ある情報を引き出し、課題解決につなげる手段です。
膨大なデータを正しく取捨選択できないと、かえって時間が割かれたり、逆効果になることもあるので、プロの目をもったデータサイエンティストの存在は欠かすことができません。
データサイエンティストはどんな仕事をしている?
データサイエンティストは主に以下のように、主に2通りの働き方があります。
- 自社のサービスへのデータを解析する
- 他社のサービスへのデータ解析を援助する
上記どちらにも共通している仕事内容をピックアップすると、
- 現状の悩みをあぶり出す
- 蓄積されたデータを集め、分析する
- 適切な課題と、その解決策を立案する
- 分析を行うための環境を良化する
などがメインです。
まずはどういった悩みを抱えているかを掴み、溜まっているデータを集めて確認します。
それらを解析したうえで、本当にやるべき課題および解決策を立案し、実行していくことが本質です。
また快適で素早い処理を実現するために、ツールの導入や変更など環境の良化にも携わります。
データサイエンスの将来性とキャリアパス
データサイエンスは間違いなく、将来性のある職業です。
大量の情報から正しい課題と対策を立案するフェーズは、困難を極めるからです。
例えばデータは必ずしも、人間心理や要求として正しいとも限りません。
データや数字の裏に隠れた、本当の潜在ニーズというものも存在するため、AIが代替してできるほど簡単ではないからです。
またデータサイエンスに携わることで、
- 機械学習エンジニア
- データアナリスト
- ITコンサルタント
といったキャリアパスを実現できます。
AIをゼロから開発するエンジニアにも、データサイエンスによる分析力は役立ちます。
またその経験を活かした専門家ポジションも相性がよく、再現性も高いでしょう。
データサイエンスが活用されている例
実際にデータサイエンスは、次のような業種で重宝されています。
製造業:製造物の異常検出
製造業は、代表的な活用事例のひとつです。
具体的には、製造プロセス中のセンサーデータや生産データを収集し、異常を検出するといった例があります。
これにより、ライン上の品質異常や機械の故障などを早期に検知し、効率を上げることが可能。
これらの実現のために、特徴量エンジニアリングや機械学習アルゴリズム、データの可視化、ルートコーズ分析などを適用しつつ、活躍の場を拡大しています。
飲食業:廃棄ロス削減と売上アップ
飲食業界でも、廃棄ロスの削減および売上アップの課程で有効活用されています。
たとえば大手寿司チェーンでは、食器にICチップを埋め込むことで、
- 総合的な人気のメニューの調査
- 時間帯別の寿司ネタの需要
- 年齢別の人気メニュー
などを可視化して、売上のアップにつなげました。
この他にも、食材の仕入れや在庫管理の面で役立っています。
例えば過去の販売データや顧客の嗜好を調べて予測することで、適切な仕入れ量を決定、かつ過剰な在庫を抑えられ、結果として食品ロス撲滅に貢献します。
農林水産業:気象の予測による悪影響の先読み
農林水産業では、気候変動によって発生する影響を先読みすることで、リスクを縮小することに成功しています。
例えば過去の気象の傾向を分析し、作物の成長に与える影響をモデル化することで、異常な気象パターンや水温変化が予測された場合に、適切な対策を講じるといった内容です。
農作物の生育には、気象条件がたいへん重要です。
データサイエンスを組み合わせれば、気象データと生産データを合わせて、気候変動が引き起こす悪影響を未然に防げます。
また異常気象による被害や資源の減少リスクへの評価は、保険やリスクマネジメントの分野でも活用されています。
医療業:薬の安全性向上と患者のリスク軽減
医療業はとくに、データサイエンスの活用に前のめりな分野として知られています。
具体的には、
- 新しい薬品の開発
- 患者の病気の発症リスクの軽減
の用途で役立てられていることが特徴です。
例えば新しい薬品の開発では、現在まで蓄積されたデータから解析を繰り返し、薬品の効能および安全性に関する試行錯誤が日々行われています。
またこれまでの患者のデータを活用し、病気の発症パターンなどを特定することで、発症の可能性を削減。
さらに悪化のリスクを見極め、あらかじめ適切で正当な対策を講じることに成功しています。
運輸業:最良の配送ルート提示による工数削減
運輸業も、データサイエンスを効果的に導入している業界です。
過去の運送データや交通情報を分析し、最適なルートや配送スケジュールを提案。
これにより運輸業者は距離や交通渋滞、時間制約などの要素を考慮しながら、最も効率的なルートで配送を行えます。
また複数の配送依頼や車両の制約条件に応じて、配送ルートを最適化することも可能です。
さらにリアルタイムな交通情報や天候データ予測で、配送遅延やトラブルへの対策も行われています。
データサイエンスは、配送業の工数削減や燃料消費の最適化に欠かせません。
スポーツ業:戦術策定およびパフォーマンス分析
データサイエンスの事例には、スポーツ業界での活用もあります。
使われる用途としては、主に
- 戦術の最適化
- パフォーマンス維持
- トレーニングの最適化
- 観客エンゲージメント向上
- ファンの応援体験の充実
などです。
これまでに積み上げた情報を利用することで、戦術的なアプローチやプレースタイルを最適化することが可能。
また適切な分析に基づき、その選手に合った食事やトレーニング法などを見直すことで、パフォーマンスの維持や向上にも強力な効果を示しています。
さらにプレーヤー側のメリットのみならず、応援してくれる顧客やファンのエンゲージメントや体験にも、データサイエンスの効果が反映されています。
エンタメ業:顧客の導線分析および行動ログ解析
最後に紹介する活用事例は、エンターテイメント業界です。
データサイエンスによる顧客の行動ログや利用データ、嗜好分析によって「確実に効果を生み出すサービスの提供」を実現しています。
これによって多様化する顧客のニーズに沿ったコンテンツを展開し、数字を高めることが可能です。
さらに導線分析を実践することで、サービス提供のプロセスやUIの改善に役立てることもできます。
データサイエンスに必要となるスキル
データサイエンスを行うとき、求められる能力を挙げるなら以下です。
ロジカルな思考力
まず必要になるのが、ロジカルな思考力です。
データサイエンティストは、複雑なデータセットやアルゴリズムを武器に、データから洞察を得るため論理的な手法を適用するからです。
また問題解決のタスクにおいても、仮説の検証や実験計画の立案にロジカルな思考能力は欠かせない要素。
問題解決のための論理的なフレームワーク、数学的な思考法などに興味を持ち、この能力を養っていきましょう。
統計学の知識
統計学のノウハウも、データサイエンスに必要となります。
集まったデータを正しく取捨選択したり、分析するために重要な役割を担っているからです。
データはただ扱えばいいだけではなく、統計学の知識をもとに特徴を理解し、パターンや傾向を掴まなければいけません。
さらに推測統計や回帰分析などの応用技術を使うことで、データの背後にあるメカニズムや因果関係を解明できるものです。
データサイエンスと統計学は、なるべくセットで取得することが推奨されます。
提案やプレゼン能力
提案・プレゼンの能力も、必要な能力のひとつです。
データサイエンティストは、情報を有効活用する方法、分析の末に浮き出た課題への改善策などを「提案」することも、仕事内容として含まれているからです。
ただ情報を分析するだけが仕事ではありません。
データの背後にあるストーリーや価値を可視化し、その結果をビジネス上の意義や効果に結び付けることが求められます。
またプレゼン能力は、分析結果を的確に伝え、関係者とのコミュニケーションを円滑に行う点でも重宝します。
データサイエンティストになるには?
データサイエンティストになるには、以下のステップを踏む必要があります。
- 数学や統計学の基礎を学ぶ
- プログラミングスキルを磨く
- データ処理やデータベースを学ぶ
- 機械学習やデータマイニングに着手
- ビジネスでの提案やプレゼン力の向上
- プロジェクトに参加して経験を積む
線形代数や確率論などの数学的な手法を理解することは、データ分析の基盤となります。
また主要なプログラミング言語(PythonやRなど)を学び、データ分析や機械学習を実現するプログラムを書けるようになりましょう。
同時にデータ処理やデータベースの知識も欠かせないので、併せて押さえておくことが大切です。
また実際のデータに適用できる実力をつける観点から、データマイニングも覚えておくのが賢明でしょう。
ひととおりインプットを終えたら実際のプロジェクトに参加し、実務としての経験を積むことです。
このように学習と実践の両方を積み重ねることが、データサイエンティストに近づくための鍵となります。
データサイエンスに向いている資格
データサイエンスには以下の資格が適しているので、チェックしておきましょう。
E資格
こちらはJDLAが提供している、AIを開発する実力が求められる検定です。
応用的なAI知識が必要になるうえ、モダンな技術動向、さらには統計学なども範囲に含まれているので、難関な資格と捉えておくのが賢明でしょう。
また「JDLAが別途リリースしている認定を受けること」が受験条件となっていることも、その難易度を底上げする理由の一つとなっています。
受験料も合わせて約10万円と高価ですが、その分の価値が期待できる検定であることは確かです。
CAP(Certified Analytics Professional)
CAP(Certified Analytics Professional)は海外の国際機関であるINFORMSが提供している認定のひとつです。
分析および数学統計に特化した機関が運営する検定ということもあって、統計学を起点としたさまざまな設問が用意されています。
日本国内で受験できるものの、問題文や選択肢がすべて英語なので、英語が苦手な方だと取得は難しいのが現状です。
また受験料も高いうえ受験条件は学士というルールもあるので、その圧倒的なブランド力は強みになるでしょう。
Open CDS(Open Certified Data Scientist)
こちらは「IBM」と「The Open Group」という会社が、共同して提供している認定です。
試験の形式が通常とは大きく異なるのが特徴で、
- 定められたタスクをすべてこなす
- 昇格試験に合格する
というプロセスを踏むことで、認定が認められます。
最上位のグレードからの認定を受けることで、広く通用するデータサイエンティストとなれるでしょう。
データサイエンス分野に向いている試験は他にもあるので、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
まとめ:データサイエンスはこれからの時代に必須のスキル!
データサイエンスは、これから先も必須のスキルとしてますます認識されていくことは間違いありません。
ビッグデータや、各種ツールの爆発的な拡大が続いていることが主な理由です。
またITのみならず、医療や運輸、飲食など様々な業界や分野で役立てられていることもポイント。
今後のあらゆる分野における必須の知識として、賢明な選択肢といっていいでしょう。