AIやディープラーニングの需要が高まっている今、AI関連のスキルを身につけたい人が急激に増えています。
そのため、情報系の資格に注目が集まっていますが、特にAIに特化した資格「E資格」への関心が高まっています。
そこで今回は、E資格の概要・難易度・取得するメリット・勉強方法について紹介します。
取得するメリットや勉強方法、E資格が求められている職業についても解説するので、今後AIに関する仕事をしたい人はぜひ最後までご覧ください。
結論からいうと、E資格の難易度はかなり高いですが、就職や転職で有利になるため、AIに関する職業に就きたい人は取得しておいて損はないです。
E資格とは?基本的な知識を解説
まずは、E資格について解説します。
概要
E資格は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、AIや機械学習のスキルを証明する資格のことです。
普通の資格試験とは違い、E資格ではJDLAが実施するプログラムを受講する必要があるため、資格取得には座学だけではなく実務的なスキルも必要になります。
数少ないAI関連の資格なので、AIやディープラーニングのスキルを身につけていきたい人におすすめといえるでしょう。
試験内容
E資格の試験内容は、応用数学・機械学習・深層学習・開発運用環境の4分野です。
AI分野で活躍するエンジニアを生み出すことを目的とした資格なので、実務で必要になる理論的な数学の知識から、実際にAIを動かすための開発環境に関する知識まで、幅広い試験内容になっているのが特徴です。
試験形式
E資格の試験時間は2時間(120分)で、100問程度の問題に解答する試験です。
幅広い分野の基本的な知識を問う試験ということもあり、選択問題が多いため、テンポよく解答していくことが重要になります。
需要・将来性
E資格でカバーしているAI・機械学習の分野は、現在急成長しており、今後も伸びていく分野と言われています。
ChatGPTの登場をきっかけに日常生活でもAIを使うことが増えたため、今後AIはどの業界でも使われていくでしょう。
これまではIT企業のエンジニアのみがAIエンジニアを求めていましたが、今後は幅広い業界でAIエンジニアの需要が高まっていくため、E資格の需要は高まっていくのは間違いありません。
G検定との違い
E資格を実施しているJDLAは、G検定と呼ばれる資格試験も実施しています。
E資格(JDLA Deep Learning For ENGINEER)はディープラーニングのエンジニアを育成する目的で作られた資格ですが、G検定(JDLA Deep Learning for GENERAL)はAIやディープラーニングの知識を持つジェネラリストを育成する目的で作られています。
そのため、E検定はディープラーニングを扱うために必要な数学や開発環境に関する問題が出題されますが、G検定はジェネラリストとして必要なディープラーニングの基礎知識や活用方法についての問題が出題されるという違いがあります。
E資格の難易度
難易度や必要な勉強時間は、以下の通りです。
合格率
E資格の合格率は約7割と、そこまで低くはありません。
2018年から年数回試験が実施されていますが、合格率が最も低いのが2019年(1回目)の63.31%、合格率が最も高いのが2021年(1回目)の78.44%でした。(参照:「E資格(エンジニア資格)2023#2」結果発表とシラバス改定のお知らせ)
合格率を見ると難易度が低いように見えますが、JDLAが実施しているプログラムを受講した人しか受験できないため、一般の資格試験のように全く勉強せずに受験する人はいません。
また、大学で学ぶレベルの数学の知識から、実務で必要になる開発の知識まで必要になるため、受験者の大半は情報系の大学出身者やAIを実務で使っている社会人です。
そのため、一般的な合格率70%の資格よりも難易度が高いということを知っておきましょう。
必要な勉強時間
E資格に合格するために必要な勉強時間は、およそ200時間程度といえます。
2021年に人工知能の教育コンテンツを開発するStudy-AI株式会社がE資格に関するアンケート調査を行ったところ、E資格の勉強を100〜200時間勉強したという人が45.59%、200〜300時間と答えた人が42.65%いました。(参考:Study-AI)
もちろん、これまでの経歴やスキルによって必要な勉強時間は異なりますが、200時間程度は必要になると思っておくのがよいでしょう。
他の資格との比較
AI検定やPythonエンジニア認定データ分析試験など、E資格と似た資格もあります。
AI検定は、AIや機械学習に関する基礎的な知識をカバーしているAI初学者向けの資格試験なので、E試験と比べると難易度が低いという特徴があります。
Pythonエンジニア認定データ分析試験は、Pythonを使ってデータ分析を行うためのスキルに特化した資格なので、E試験と比べると活用範囲が狭いといえるでしょう。
そのため、AIに関する基礎的な知識を身につけたい初学者はAI検定を、Pythonを使ったデータ分析を行いたい人はPythonエンジニア認定データ分析試験を受験するのがおすすめです。
E資格が難しいと言われる理由
E資格が難しいと言われる理由は、以下の通りです。
JDLA認定プログラムの受講しないといけないから
多くの資格試験は申し込めば誰でも受験できますが、E資格はJDLAが実施する認定プログラムを受けないと受験することができません。
そのため、受験者は公式が実施したプログラムを受けて基礎的な知識を身につけた人しかいないため、受験者の平均的なレベルが高いといえます。
合格率70%と聞くとそこまで難易度が高くないように感じますが、実際にはプログラムを受講した人でも3割程度が落ちている高難度の資格試験です。
問題数が多いから
E資格は120分で100問程度をこなす必要があるため、1問に使える時間は1分程度しかありません。
選択問題とはいえ、専門的な内容の問題を1分程度で解いていくのは難しく、ペースを掴めずに不合格になってしまう人もいるので時間配分には注意が必要です。
過去問がないから
資格によっては公式から過去問が公開されていますが、E資格の過去問は公開されていません。
また、専門的な資格試験ということもあって受験者による情報も出回っていないため、試験対策をするのがかなり難しいです。
E資格を取得するメリット
E資格を勉強することで、以下のような恩恵を得られます。
スキルを証明できる
E資格は難易度が高いため、取得するとAIに関するスキルがあることを証明できます。
基本情報技術者試験やデータベーススペシャリストなど、情報系の資格はたくさんありますが、AIに特化したものは少ないため、AIに関するスキルを証明するには最適な資格といえるでしょう。
就職や転職で有利になる
AIに関するスキルを証明できるE資格を持っていると、就職や転職で有利になることは間違いないでしょう。
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験など、基本的なITのスキルを問う資格試験を取得している人はたくさんいますが、E資格のようなAIに特化した資格試験を取得している人は現状ではほとんどいません。
E資格は難易度が高く、徐々に知名度が上がっていることもあり、幅広い業界・職種の入社試験で有利になると考えられます。
エンジニアとしてスキルアップできる
現在エンジニアとして仕事をしている人は、E資格を受験することでスキルアップできます。
E資格で問われる数学の知識は幅広い分野で活用できますし、AIに関する専門知識は今後AIを取り入れるときに役立つでしょう。
今後より需要が高まるAIに関する知識を学んでおいて損はないので、仕事をしている中でスキルアップの機会がないと感じている人は、E資格を受験してみてはいかがでしょうか。
E資格を使って転職を成功させる方法
E資格を使って転職を成功させたい人は、以下の3ステップを実践してみてください。
ポートフォリオを作成する
ポートフォリオとは、これまでの経歴・実績や自分のスキルをまとめた書類のことで、転職活動のときに役立ちます。
職務経歴書や履歴書でも取得資格の欄に「E資格」と記入できますが、ポートフォリオでは資格取得の経緯や、E資格のスキルを使って実務で何ができるのかという詳細まで記入することはできません。
エンジニアは、Webデザイナーのようにポートフォリオの制作は必須ではありませんが、制作しておくことで企業側へのアピールにつながります。
特に、AI系への転職を希望であれば、こちらのITスクールで知識ゼロからアプリ開発ができ、ポートフォリオとしても使用できるのでおすすめです。
スキルの活用方法を考える
E資格は高難易度なのでスキルがある証明になりますが、ただ資格を持っているだけでは仕事にどう活かせるかわからないため、就職・転職時に効果的にアピールすることができません。
そのため、資格取得でどのようなスキルが身についたのか、資格取得で得たスキルを実務でどう活かしたのか、というのを考えて、企業側にアピールする必要があります。
スキルを活かせる職場に応募する
どの業界・職種でもAIで業務効率化を図ろうと考えていますが、全ての企業がAIを導入しようと考えている訳ではありません。
最新技術の導入を考えていない企業に就職・転職する場合は、E資格を持っていてもアピールにならないため、AI技術導入に積極的な企業を選ぶ必要があります。
AI関連の技術を取り入れたい企業では、E資格を持っている人材は重宝されるので、採用されやすいのはもちろん、待遇が良くなる可能性が高いです。
E資格をもっていると有利になる職業・求人
E資格をもっていると有利になる職業・求人は、以下の3つです。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、データ分析やデータの活用、AIを使った業務改善の提案を行う職種のことです。
自社のシステム開発はもちろん、他部署・他社のコンサルティングを行うこともあるため、幅広いAIの知識を持っているE資格取得者は重宝されています。
データアナリスト
データアナリストは、統計や分析の知識を使って、業務効率化や問題解決を行う職種のことです。
最新技術を使って効率化していくためAIの知識が必須で、統計を行うための数学的な知識も必要になるため、どちらの知識も備えているE資格取得者は間違いなく重宝されます。
機械学習エンジニア
機械学習エンジニアは、AI技術を使って新しい技術を研究したり、最新技術を使った商品を開発する職種のことです。
AIの知識はもちろん、機械学習を行うための数学の理論が必須になるため、E資格取得者を重宝する傾向があります。
E資格の勉強方法
E資格の勉強方法は、以下の通りです。
書籍を使って独学する
AIに関する書籍を使って勉強して、E資格を取得する人もいます。
ただ、過去問がなく勉強しづらいため、自分一人でE資格に合格するのは難しいでしょう。
プログラミングスクール・講座に通う
過去問がなく専門的な知識が必要になるE資格は、プログラミングスクールや講座を受講するのがおすすめです。
AIの知見が豊富な講師に教わることで、効率よく学ぶことができるため、難易度の高いE資格にも合格できる確率が上がります。
E資格のおすすめ書籍
E資格の勉強をする際には、以下の書籍を使うのがよいでしょう。
ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
「ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」は、ディープラーニングに関する知識を初学者でも理解できるようにまとめられている本なので、AIの勉強をする人に最適です。
ゼロから作るDeep Learning② ―自然言語処理編
「ゼロから作るDeep Learning② ―自然言語処理編」は、先ほど紹介した本の続編で、自然言語処理に特化した本です。
1冊目で学習した人は、こちらの本でより深くディープラーニングの知識を身につけるのがおすすめです。
徹底攻略ディープラーニング E資格エンジニア問題集
「徹底攻略ディープラーニング E資格エンジニア問題集」は、E資格の模擬試験問題が収録された本で、過去問が公開されていないE資格では購入必須の書籍と言われています。
AIの知識を学べるのはもちろん、出題傾向・問題の雰囲気を知れるので、120分100問を解くスピード感を身につけるのにも最適です。
E資格のおすすめプログラミングスクール・講座
E資格を取得する人におすすめのプログラミングスクール・講座は、以下の3つです。
AI研究所
AI研究所が実施している「E資格対策ディープラーニング短期集中講座」では、対面・オンラインを選ぶことができ、最短4日で知識を習得できるため、効率よく学習したい人におすすめの講座です。
JDLA認定の講座で、受講者の合格率が83%と高いので、最短で確実に合格したい人におすすめの講座といえます。
キカガク
キカガクが実施している「ディープラーニングハンズオンセミナー」は、3日間でE資格の対策をする講座です。
事前に予習するための資料を貰えるため、3日間の講座でついていけるか不安な人は、早めに申し込んで長期間予習するのがよいでしょう。
公サイトには講座の内容をわかりやすくまとめた紹介動画もあるので、気になる人は視聴してみてください。
活学ITスクール
ラストデータが実施している「活学ITスクール AIアプリコース」では、1ヶ月以上かけて自分のペースでAIの知識を身につけられるため、AI初学者におすすめのスクールです。
初学者でも理解できるようにアニメーション動画で講座が受けられるため、YouTubeやUdemyでの動画講義が好きな人にはぴったりです。
文系大学出身の人や、パソコン操作が苦手な人、何を勉強していけばわからない人でも安心して通えるスクールなので、プログラミングスクールについていけるか不安な人はぜひ利用してみてください。
まとめ
E資格はAIに関する幅広い知識が問われるうえに、120分で100問程度に答える必要があるため、200時間程度は勉強する必要があると言えます。
また、JDLAが実施するプログラムを受講し、その上で合格率70%程度の試験に合格する必要があるため、合格率の数字以上に難しいと感じるでしょう。
ただ、資格取得できればAIに関するスキルが身についているのはもちろん、就職や転職で有利になるのは間違いないので、興味がある人はぜひ資格取得を目指してみてください。