今回は弊社とご協業頂いている東京大学の池上教授にインタビューさせて頂きました。
Alifeという人工生命研究の第一人者として広く知られている池上教授に、現在開発研究されているロボット「オルタ4」についてお話頂いています。
Alife(人工生命)
引用:東大新聞オンライン
ーーまず初めに、Alifeとは何か教えて頂けますでしょうか?
池上教授:「Alife」は人工生命であり、自動とは異なる、自律的なアルゴリズムの研究です。
世間では現在ChatGPTが賑わっていますが、ChatGPTとはネット上の文章を何兆個も集めて、数百億のパラメータからなるニューラルネットワークが、文章中の次に来る単語を推定・生成するものです。
喋りたいことを喋っているわけではないという意味で、自律的ではありません。
ーー自律的というのはどういう意味ですか?
池上教授:何も言わなくても自らがいろんなパターンを作って動くという意味です。
何かを人が命令したりきっかけを与えて答えが返ってくる自動的なものとは違います。
ーーなるほど。そしてその自律できるロボットというのがオルタなのでしょうか?
池上教授:オルタの歴史と一緒にざっくり説明すると、オルタ2では指揮をするというわかりやすいタスクを実行させ、これまでの研究を表現させました。
その次のオルタ3では、人の真似をさせてその動きや表情を記憶させて、より「人間」に近づけるためのデータを得ようとしました。
人間の赤ちゃんも初めは真似をしながらいろいろなことを覚えていきますよね。
それと同じです。
そして現在開発研究しているのがオルタ3プラスで、よりリアクティブなものを実現しています。これまでで一番自律性を伴っているのはオルタ1ですが、この自律性は乱数的な自律性です。
オルタ3はコーパスを利用して、意味のあるしかし自律的に考える力を強化させています。
オルタ4
ーー現在開発中のオルタ4では、具体的にはどんなことができるのでしょうか?
池上教授:目についているカメラ映像から、視界に入る人間を検知してその動きを真似できます。
オルタは人間の骨格を検知するライブラリを使用するようになっており、人間の骨格を検知して真似させることができます。
検知した人の動きを真似し、うまくできなさそうな時には過去の記憶から似たようなものを呼び出して動きます。
そしてそういった情報はすべて記憶として蓄積されていき、いまは限界がありますが、理想亭には覚えれば覚えるほどオルタ自身がアップデートされていきます。chatGPTと繋いでみてるのはその辺です。
オルタの課題点
ーー人工生命が誕生するのも遠くないのではと感じてしまいますが、現在の課題などはあるのでしょうか?
池上教授:課題はいくつもありますよ。
まず、オルタの記憶を大量に蓄積できる容量が足りていないこと。
ChatGPTのようなAIも、開発企業のOPEN AI社の圧倒的な資金力によって記憶容量が確保されているので実現できています。
我々には資金力がないため、記憶容量が足りていません。
他には、奥行きの検知に弱いことも課題です。
人間を検知しても、前後の動きを検知する機能が弱いため、再現性が足りていません。
そして一番の課題は、欲望です。
人間には欲望があり、その欲望から行動が生まれます。
オルタは自律的に考えて行動しますが、「食事をとりたい」とか「外に出たい」といった欲望から行動することはできません。
その欲望をどうやってオルタに入れていくか、今後も考えていく必要があると思っています。
ーーなるほど、今後も改善の余地がかなりありそうですね。
注目している技術
ーーそういった課題がある中で、今注目している技術はありますか?
池上教授:もちろんLLM(巨大言語モデル)であるchatGPTが一つにあります。
すでにChatGPT4をオルタに活用して研究をしています。
ーーどのように活用されているんですか?
池上教授:オルタの動きのコードをChatGPT4から生成させています。
例えば、ChatGPT4に「お茶を飲んで」と命令すると、オルタはお茶を飲む動きを生成して、お茶を飲んでくれます。
ボクシングをして、というと、ボクシングのパンチの動きをします。
ボクシングをするというのは、肘を曲げてから前に早く出すというような動きである事がchatGPTのどこかに記憶されているんですね。
面白いですよね。
ーー話題になったばかりの技術を既にそこまで活用されているのもさすがですね!その他には注目されている技術はありますか?
池上教授:オルタの皮膚に搭載する各種センサーや、新しいオルタの目となるカメラとかでしょうか。オルタの内臓感覚を作らないと。
ーーオルタの内臓感覚。。すごい未来が待っていそうですね!最新の技術をオルタに活用しながらいろいろな研究をされているイメージがとてもわきました、ありがとうございます!