Pythonを使用したスクレイピングは、効率的に情報を収集するための代表的な手段のひとつ。
しかし、そもそもの概略について理解できていなかったり、なぜPythonなのかと疑問を抱く方も多いでしょう。
この記事では、Pythonでスクレイピングを行うための手順とおすすめのライブラリについてご紹介します。
またスクレイピングをする際には、絶対に覚えておきたい注意点もあるので、そちらもわかりやすく具体的に説明します。
本記事を読み終える頃には、これまでにわからなかった概略が理解でき、興味が湧いて実際にスクレイピングに挑戦したくなっていることでしょう。
スクレイピングの概要
まず本項では、スクレイピングとはどのようなものかをご紹介します。
スクレイピングは、対象のサイトやホームページから情報を集めたり、そこから必要なものだけをピックアップしたりする手法のことを指します。
現に情報発信サイトやSNS、ECなどさまざまなサイトで利用されていることが特徴です。
基本的にスクレイピングを行うならどんな言語やツールでも実現が可能ですが、より確実な結果を求めるなら、用途によって使い分けたほうがいいでしょう。
その中でも本記事では、「Python」でスクレイピングを行うことを推奨しています。
Pythonでのスクレイピングが推奨される理由
スクレイピングを行うときにPythonが推奨されている理由を挙げると、次のようになります。
たくさんのライブラリが揃っているから
推奨される理由の一つは、豊富なライブラリの存在にあります。
ほかの言語とくらべても優れた特化型のライブラリは多く、とくにBeautiful SoupやScrapyなどは、データを抽出するためのパワフルなツールとして広く親しまれているのが現状。
さらにSeleniumでは、Webブラウザをとおしてページを操作することも可能です。
簡単なスクレイピングが実現できるうえ、使っている人も多いので、オンライン上では多くの情報やサンプルも公開されています。
記法がシンプルで書きやすく読みやすいから
シンプルで書きやすく読みやすい記法であることも、推奨の理由のひとつです。
Pythonは記述法が直感的であり、他の言語に比べてコードがとても簡潔といえます。
スクレイピングでは、HTML解析やデータ抽出など、複雑な操作が必要な場合がありますが、コードがシンプルになることで可読性が高まります。
さらに直感的な制御構造や組み込み関数もたくさん備わっていることから、実装や処理はより効率的になるでしょう。
このような使いやすさと可読性は、開発者が迅速で正確なスクレイピングをするうえで貴重な要素です。
クロスプラットフォームに対応しているから
Pythonは、Windows、Mac、Linuxといったいろんなオペレーティングシステム(クロスプラットフォーム)で動作します。
なので開発者は自分の好みや環境に応じてPythonを選び、スクレイピングを実施できる点が、おすすめの理由です。
さらには多くのライブラリもクロスプラットフォームに対応しているため、異なる環境でのプロジェクトの移植性が高くなります。
クロスプラットフォームへの対応は、開発者が柔軟にプロジェクトを進める際、想像以上に重要な役割を担います。
Pythonでスクレイピングを行う手順
スクレイピングにPythonを用いる際、主な作業の流れは以下のようになります。
- 対象のサイトの選定
- ライブラリのインストール
- HTMLファイルのダウンロード
- その他必要情報の抽出
- テキストファイルとして保存
それぞれ詳しくご紹介します。
①スクレイピング対象サイトを決める
はじめに、どのサイトからどんな情報を取得するか、その対象を決めましょう。
対象のサイトは、取得したい情報や目的に応じて異なります。
たとえば、ニュースサイトから最新のヘッドラインを取得したり、ECサイトから製品の価格や評価を抽出したりすることが、考えうる目的です。
スクレイピングするサイトを決める際には、サイト側の利用規約や利用制限などにも注意が必要です。
肝心なデータが正確かつ最新で、なおかつスクレイピングがきちんと許可されているサイトを選んでください。
②ライブラリをインストールする
対象となるサイトが選択できたら、ライブラリのインストールにうつります。
ライブラリは一般的にBeautiful SoupやRequests、Scrapyなどを利用すれば、大きな失敗はありません。
これらはページの解析やHTTPリクエスト送信など、スクレイピングに必要十分な機能を提供しているためです。
ライブラリのインストールには、Pythonのパッケージマネージャー「pip」を使います。
仮にBeautifulSoupを用いる場合は、以下のコマンドを実行してください。
pip install beautifulsoup4
③対象ページのHTMLファイルをダウンロード
①と②は下準備のようなものでしたが、ここから本格的にスクレイピングに入ります。
対象サイトから、HTMLファイルをダウンロードしましょう。
HTMLファイルはこの後のプロセスである「解析」に必ず必要なので、欠かすことはできません。
またこちらをダウンロードしないと、その都度対象サイトへのアクセスと更新が必要になるので、サーバー負荷の観点から迷惑行為に該当します。
その点ダウンロードすることで、それ以降はファイルさえ読み込めば解析できるので、こちらの方法が望ましいわけです。
なおこちらのプロセスには、データ取得に便利な「requestsライブラリ」を使用のうえ、以下のコマンドを入力してください。
import requests
url = "https://www.example.com/"
response = requests.get(url)
html = response.content
④ダウンロードしたHTMLを解析
次にやるべきフェーズが、③でダウンロードしたファイルの解析です
ファイルのみではまったく役に立たないので、それを解析して、抽出しなければ意味がありません。
これには解析に特化したPythonライブラリである「Beautiful Soup」を用い、以下のコマンドを入力してください。
import requests
from bs4 import BeautifulSoup
# 対象のWebサイトからHTMLファイルをダウンロード
url = "https://www.example.com/"
response = requests.get(url)
html = response.content
# HTMLファイルを解析
soup = BeautifulSoup(html, "html.parser")
⑤必要な情報の抽出
情報を解析した後は、抽出する必要があります。
抽出には、解析したファイルに適したクエリやセレクタでアクセスしなければなりませんが、ライブラリ「Beautiful Soup」を活用すれば容易に実現が可能です。
④同様の「Beautiful Soup」を用いている場合、以下のコードを続けて打ち込んでください。
# 解析したHTMLファイルから必要なデータを抽出
title = soup.find("title").text
⑥取得した情報をテキストファイルとして保存
得た情報をテキストファイルとして保存しましょう。
Pythonではopen()関数を利用することで、テキストファイル作成およびデータ書き込みが容易にできます。
たとえば、情報を「output.txt」というテキストファイルに保存するには、⑤で書いたコードの下に以下を打ち込んでください。
# 取得した情報をテキストファイルとして保存
with open("output.txt", "w") as f:
f.write(title)
実行すると、取得した情報は「output.txt」というテキストファイルに保存されます。
Pythonのスクレイピングで役立つライブラリ
Pythonでスクレイピングをするなら、以下で紹介するライブラリが重宝するでしょう。
Requests
Requestsは、PythonでHTTPリクエストを送信するときに役立ちます。
HTTPリクエストを送信するだけでなく、ヘッダーやボディを設定したり、HTTPレスポンスのステータスコードを取得することも可能です。
Pythonでスクレイピングをするなら欠かせないものとしておなじみで、使用することでリクエスト送信をはじめ、レスポンスからのデータ取得も容易になります。
なおこちらは標準のライブラリではないので、別途インストールが必要になりますが、そのためには以下のコードが用いられます。
pip install requests
Beautiful Soup
こちらはPythonで、HTMLとXMLを解析するためのライブラリです。
両者それぞれの構造を解析し、特定の要素や属性を抽出する用途で活躍します。
なお、こちらも標準のライブラリではないため、インストール作業が必要になります。
そのためのコードは以下のとおりです。
pip install beautifulsoup4
Selenium
こちらは主に、ブラウザの自動制御を行う際に使われるフレームワークです。
使用することでブラウザを自動操作して、サイトからデータを取得することができます。
具体的には、
- カーソルの移動
- 特定箇所のクリック
- フォームへの文章入力
- ページ間の遷移
といったプロセスを自動化できるのが特徴です。
さらに複数のブラウザ(Chrome、Firefox、Safariなど)に対応しており、異なる環境でのテストやスクレイピングにおいても威力を発揮します。
Scrapy
サイト全体のデータ収集やクローリングに特化したライブラリで、大規模なプロジェクトにうってつけです。
Scrapyを使用することで、基本的な機能(HTTPリクエストの送信、データの抽出など)が内部で処理されるので、開発者はより高いレベルでプログラミングできます。
さらにScrapyは非同期のプロセスや分散クローリング、データのパイプライン処理などの高度な機能もサポート。
さらにAPIを用いた抽出作業など、汎用性の高いクローラーとしても活用されています。
Pythonによるスクレイピングが役立てられるケース
Pythonスクレイピングが役立てられている事例として、以下の3つをご紹介します。
マーケティング業務
まずはマーケティング業務で、幅広く役立てられています。
たとえば競合他社のウェブサイトから価格や製品概要を集めれば、分析や調査に活用できます。
また、SNSプラットフォームからユーザーの意見やトレンドを集めれば、商品開発や戦略改善に役立てることも可能です。
マーケティング業務の精度向上を目的に、スクレイピングを導入する事例は多くあります。
業務の生産性向上
業務の生産性向上においても有用です。
たとえば、データの自動収集や情報の自動更新が実現できれば、日常的にやっていることをやる必要がなくなるので、時短になります。
こういった時間と手間の節約の観点でも、スクレイピングは重宝される存在となっています。
各種サービスの開発
あらゆるサービスを開発するときも、スクレイピングは大きく役に立つ手段です。
たとえば新しいモバイルアプリなどの開発において、外部のデータソースから情報を取得する必要がある場合に、スクレイピングを活用できます。
仮に公開されているAPIが存在しない場合でも、データを収集して自身の環境に組み込むことができる点は大きなメリットです。
自動収集が実現できれば、要約サイトや価格レビューの比較コンテンツを作成できます。
Pythonを用いたスクレイピングの注意点
Pythonでスクレイピングをするとき、必ず覚えておいてほしい注意点について解説します。
知らないと違法に該当することもあるので、本項で把握しておきましょう。
できるだけAPIを活用する
Pythonに限らずですが、スクレイピングするなら、できるだけ公式のAPIを活用することが大切です。
APIはサービスが提供する公式なデータ取得手段であり、通常のスクレイピングより信頼性が高く、利用規約にも適合しています。
さらにデータの収集や更新が従来に比べて簡単にでき、利便性も高いです。
ある程度規模の大きなサイトの多くは公式のAPIを提供しているので、規約の同意や認証を行ったうえ、積極的に活用しましょう。
著作権に触れない使い方を心がける
著作権は、作ったものに対して認められる権利のことで、楽曲やイラストや動画、文章やプログラムコードなど、あらゆるものが当てはまります。
スクレイピングを行うなら、「サイトに存在するすべて情報は、著作物に当てはまる可能性がある」という認識を、常に忘れないよう利用しましょう。
このことを知らずに著作権を侵害すると、損害賠償を請求されたり、刑事罰を受ける可能性もあります。
無意識のDOS攻撃にならないようにする
DoS攻撃とは、特定のサイトやシステムに連続でアクセスしたり、大量のリクエストを送信することで、サイトやシステムをダウンさせる嫌がらせ行為のことです。
スクレイピングは、このDos攻撃に該当する可能性があります。
たとえば並列処理やマルチスレッドを使用すると、連続アクセスを行ったり、多くのリクエストを送信するからです。
なのでサイトへの負荷を考慮しながら、
- HTMLファイルをダウンロードして読み込み回数を減らす
- スロットリングやキューイングの手法を使用する
といった施策を忘れずに行ってください。
まとめ:Pythonで手際のいいスクレイピングを実現しよう!
スクレイピングを行うなら、Pythonを用いてやることで段違いな効率アップを図ることができます。
初学者でも簡単にスクレイピングを行うための、必要な機能がたくさん揃っているからです。
利用規約や法律をしっかり把握のうえ、ぜひPythonで効率的なデータ収集を実現してください。