LinuC(Linux技術者認定試験)とLPIC(Linux Professional Institute Certification)は、Linuxに特化した技術者認定試験ですが、それぞれに異なる特徴があります。
そのためどちらを選ぶかは、個人の目指すキャリアや就職先によって大きく変わってくるのが実情です。
この記事では、それらの詳細な違いを解説するなど、自身の目標に合った選択をする一助となる情報をお届けします。
ぜひ本記事をお読みになり、最終的にどちらを目指すべきか、公開のない選択のきっかけになれば幸いです。
他のIT資格も知ってから取得するIT資格を決めたい方は、下記記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。
LinuCとLPICはどのような資格?
ここでは、LinuCとLPICそれぞれの違いをくわしく説明していきます。
LinuC
LinuCは「Linux技術者認定試験」が正式名称の、Linux専門の国内資格です。
日本国内における認知度が高く、日本語で受験できる点が特徴。
試験も日本語で実施されており、内容も実務に即したもののため、主に国内におけるキャリア形成やステップアップに役立てられています。
試験の範囲は、基本的なLinuxにおける知識から、高度なセキュリティや設定などワイドな範囲をカバー。
新しくLinux関連の仕事に従事したい方を始め、プロフェッショナルな管理職ポジションを目指す方からも人気があります。
LPIC
LPICは「Linux Professional Institute Certification」が正式名称となっている、Linuxの国際資格です。
LinuCとは違って国際的に認知されており、グローバルなキャリアに有利。
LinuCは特定の企業での求人に強い一方、LPICは幅広い企業や業界での需要があるというのが大きな違いと考えていいでしょう。
LPICは複数のレベル(LPIC-1、LPIC-2、LPIC-3)に分かれており、難しいレベルになるほどより実践に近い問題や、経験が問われる出題が多くなります。
LinuC同様、これからLinux従事者を志す方はもちろん、国外に活躍の幅を広げたい方にもぜひ受験を検討してほしい資格です。
LPICについてイメージがわかない方は、下記記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。
LinuC試験ができるまでの経緯
LinuC試験ができるようになった経緯は、LPIC試験に「とある問題」があったからです。
その「とある問題」とは、以下のようなもの。
- 「国内市場における技術革新」に柔軟に対応できなくなってきた
- LPICの試験問題が国内外へ流出する用になってきた
こういった問題を解決すべく、LinuC試験は2018年3月からの運営をスタートしました。
はじめの方はLPICとの出題範囲と非常に酷似したものでしたが、2020年からのアップデートにより、国内の現代技術に付随する出題内容へと変革を遂げました。
その結果「この試験は、国内の技術者が得るべき知識に該当する」と、国内のNPOから認定を受け、正式にLinuCが作成されました。
ゆえに現在、国内でLPICを管理しているのは、LPI-inc(LPI日本支部)となっています。
LinuCとLPICで感じられる主な違い
LinuCとLPICで実感できる大きな違いを見ていきましょう。
制作に至るまでの経緯
まず挙げられる大きな違いは、制作に至るまでの経緯です。
両資格の制度は、Linuxの重要性と需要の高まりに応え、個別の背景と目的に基づいて形成されています。
そんな中LinuCは国内でのLinux需要増加に対応するため、業界団体との協力により、2018年にスタートしました。
一方、LPICはLinuxのグローバルな普及に応じてLinux Professional Institute(LPI)によって設立され、国際的な認知度を確立。
LPIは、Linux技術者の能力を標準化するための試験制度を開発し、2000年にLPICの認定プログラムを開始しました。
評価基準の範囲
評価の基準の範囲も、両者の試験では大きく違います。
LPICは世界で180を超える国において、9言語で実施されている国際資格。
世界中で同じように試験が実施されているので、試験の評価の基準は国内にとどまりません。
一方のLinuCはというと、LPI-Japanの提供による国内向けの資格のため、もし合格しても国内での評価にとどまり、国外からの評価が薄い傾向です。
このように両者の資格は、評価基準の範囲も大きく異なっているのが特徴といえます。
規模・需要の大きさ
規模および需要の大きさも、それぞれの違いを大きく表す要素のひとつです。
LinuCはまだ歴史が浅いこともあってか、累計での認定者数は4万人程度となっています。
一方のLPICはスケールが世界ということもあり、試験はじつに180カ国以上で行われており、世界中で70万人以上が受験。
これらの数字をみてわかるように、LinuCはまだまだ発展途上ではありますが、歴史の長さもさることながら、規模や需要の大きさではLPICに軍配が上がります。
公式サイトやテキストの簡潔さ
公式サイトやテキストの簡潔さは大きな違いの一つです。
LinuCの公式サイトやテキストは日本語で書かれているため、簡潔でわかりやすいものとなっています。
そのため日本語が得意な方であれば、LinuCの試験の勉強は比較的簡単に行えるのが特徴です。
一方LPICの公式サイトやテキストは、国際資格ということもあって英語で書かれており、日本語よりも複雑でわかりにくいものとなっています。
英語が苦手な方は、勉強に苦労する可能性があるでしょう。
有効・更新までの期間
有効期限や、更新までの期間も、両者それぞれに異なります。
LinuCはレベル1の101試験と102試験、レベル2は201試験と202試験といったように、それぞれの分類に合格しないと取得が認められません。
その認定を受けるために、それぞれの試験を期間内に受けなければならない決まりがあるのです。
具体的には、レベル1の合格から5年以内にレベル2に合格しないと、片方が無効になってしまいます。
一方のLPICはこのような複雑なルールは存在しないものの、「認定ステイタス」というものが存在。
こちらは資格の有効性を示すものであり、5年を過ぎてしまうと知識が古いとみなされ、資格の価値が下がってしまいます。
失効こそしないものの、最新の知識に精通していることをアピールするためにも、5年に一度は再受験して合格する必要があるのです。
再受験までの期間
LinuCとLPICの違いの一つに、再受験までの期間があります。
LinuCの場合、試験に不合格だった場合でも、翌日から再受験が可能です。
つまり、何度でも試験を受け直すことができます。
一方、LPICでは再受験までの期間が存在することが特徴。
一度試験に不合格となった場合、一定期間(通常は2週間から1か月)待つ必要があり、この期間を経てから再度試験を受けることが可能となっています。
この制度は、受験者に対して十分な準備期間を確保し、再度の受験に向けた学習と復習を行う機会を与えることが目的です。
合格後の年収
両者を取得すれば、Linuxを扱う者としての人材価値が上がり、年収が上がることが期待できます。
ただ需要や規模の観点から、LPICのほうが年収の上げ幅は若干大きいとされています。
やはりLPICは国際的に認められた資格ということもあり、活かせる局面が段違いに多いからです。
ただ、年収の上げ幅を大きく左右するのは、資格の保持はもちろんですが、その人がもつ経験やスキルセットによる要素が大半を占めます。
これらの要素が良質であれば、LinuCを武器にした国内での就職でも、大きな年収アップが狙えるのが実情です。
LPICは今後廃止される!と聞いたことがある方は、下記記事も読んでみてください。
LPICやLinuCを取るメリット
LPICおよびLinuCを取ることで、たくさんのメリットがあります。
Linuxの強固な土台が築ける
LPICやLinuCを取得するメリットの一つは、Linuxの強固な土台を築けることです。
LPICやLinuCの試験では、Linuxの基礎から応用まで幅広い知識とスキルを習得します。
これにより、
- Linuxのアーキテクチャ
- コンポ
- コマンドライン
- ネットワーキング
など、深い理解が可能です。
この知識と経験は、さまざまなLinuxベースの環境での作業やプロジェクトに自信を持って取り組むことにつなげられます。
実務における即戦力となる
LPICやLinuCの取得には、実務における即戦力になれるメリットがあります。
これらの認定は、Linuxを円滑に扱うだけの能力を裏付けるためのもの。
これらの試験の取得者は、Linux環境での問題解決能力を蓄えており、企業や組織において重要な役割を果たすことの約束となります。
とくにLPICは国外における需要が約束されたもののため、そのチャンスを大きく広げてくれるでしょう。
他の資格を取るときにも役立つ
両者の取得は、他の資格を取るときにも役に立ちます。
たとえばLinuCでいうと、レベル1と2を学習することで、AWSやAzureなどモダンなパブリッククラウドを学べます。
さらにAWSに関連する資格は、Linuxの一定の知識がないと合格は困難です。
このようにLinuxはあらゆるものの根幹となる知識のため、取得によって他の資格の合格率向上を図れるなど、嬉しい相乗効果が見込めます。
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LPICやLinuCを取るための勉強の方法
これらの資格を取るためには、効果的な勉強のやり方があります。
参考書を熟読する
勉強のしかたとしてまず挙げられるのが、参考書の熟読です。
参考書は基本的に分厚く、読むにもかなりの時間を要します。
そのため、すべて覚えるつもりで読まなくても大丈夫ですし、特段メモをとる必要もありません。
まずは「全体像を掴む」というイメージで、スピーディーに読み進めてください。
後に試験対策をしていく中でつまづいた時、「参考書にこういうことが書いてあったはずだな」ということを思い出せる程度になれれば十分でしょう。
類題をひたすら解く
ひととおり参考書におけるインプットが済んだら、ひたすら類題を解いてみることです。
類題を繰り返し解くことで、自分がどんな問題に答えられないのかが見えてきます。
そして答えられない類題に直面したら、その都度参考書に戻り、改めて復習を行うことで頭に定着しやすくなるものです。
類題は問題集を使ってもいいですし、インターネットから過去問題を拾うこともできます。
ITスクールを利用する
勉強の進捗やモチベーションを自分で管理するのが難しい方は、ITスクールを利用してください。
ITスクールでは、カリキュラムが試験範囲に合わせて組まれており、重要なトピックや実務での活用法を網羅的に学ぶことができます。
試験の演習を通じて自己評価を行い、弱点を克服するサポートも受けることができるので、一人での学習に自信のない方におすすめです。
Linuxの勉強の始め方がわからない方は、下記記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。
LinuCとLPICは結局どちらがおすすめ?
LinuCとLPICがどちらがいいかは、人によって違います。
ここでは、どんな人がどちらの試験に向いているか見ていきましょう。
LinuCがおすすめなのはこのような方
LinuCを取ることが推奨されるのは、以下のような方々です。
- 国外や外資系企業で働く願望や予定がない方
- 英語アレルギーで苦手意識のある方
- LPICの問題集を読むのが困難と判断した方
国外で活躍したいという願望がなかったり、あるけど具体的なプランが今のところないという方は、ひとまずLinuCの取得を目指してください。
またLPICのサイトや問題集を見て英語アレルギーが発動し、苦手意識が芽生えて目指すのが困難と感じてしまった方も、LinuCなら挑戦しやすいです。
LPICがおすすめなのはこのような方
一方でLPICを取ることが推奨されるのは、以下のような方々です。
- どちらに挑戦してもよく、悩んでいる人
- 就職や転職で魅せるポイントを増やしておきたい人
- 国外や外資系企業で働きたいが願望、またアクションプランのある方
とくにこだわりはなく、両者どちらかで迷っているなら、LPICがおすすめです。
また、転職や就職で活かせるポイントを担保したいという目的なら、LinuCよりも優位性が高いと言えます。
また国外や外資企業に務める予定があるなら、LPICのほうが安心です。
LinuCとLPICそれぞれの受験方法
ここでは、両者の受験の方法を見ていきます。
LinuCの場合
LinuCの受験は、大きく以下の手順で受験します。
- EDUCO-IDの取得
- 受験チケット購入
- 試験予約
- 受験申込時の注意事項に同意
EDUCO-IDを作成し、チケットを購入してから申し込む流れとなります。
チケットは一度購入したあと、1年以内に設定すれば有効となっていますが、なるべく早く設定を済ませましょう。
またチケットの購入には、クレジットとコンビニ決済、銀行振込が利用できます。
LPICの場合
LPICの場合の受験は、大きく以下の手順になります。
- LPI-IDを取得
- ピアソンVueに1を登録
- 受験チケットを購入
- ピアソンVueで試験登録
まずはLPIに登録し、LPI-IDを取得することが第一ステップです。
試験日や会場を間違えないよう、ピアソンVueサイト上で試験登録したら、当日忘れずに会場に足を運んで受験開始となります。
LPICの申し込み方法は下記で詳しく解説しているので参考にしてください。
まとめ:LinuCとLPICはどちらも役立つ資格!
LinuCは国内での活用に認定効果があり、傾向としては初心者からスタートする方に適しています。
またLPICはより高度なLinuxシステムを扱えることを証明する認定であり、活用用途も広く即戦力となりますが、経験者向けであることも事実。
両者ともに企業や組織での就職や昇進の際に、大きく役立つ資格ということは間違いありません。
あわよくば両方を取得することで、よりワイドなチャンスを開拓することも可能です。