「LPIC」とは、OSの一種「Linux」に関する技術力を認定する資格です。
LPICは実に多くのITエンジニアが挑戦・取得している資格ですが、「取得する意味がない」などと言われることもあります。
実際のところ、どうなのでしょうか?
一般的に言って、全く取得する意味のない資格ではありません。
この記事では、LPICの取得を検討している方に向けて、LPICの概要、「取得する意味がない」と言われる理由、学習方法などを紹介します。
取るべきIT資格を検討している方は、下記記事でジャンル別に詳しく解説しているので参考にしてください。
「LPICは取得する意味がない」と言われる理由
LPICはLinux系の代表的な資格ですが、「取得する意味がない」と言われることがあります。
そこにはどのような理由があるのでしょうか。
まず挙げられるのが、「暗記で対応できてしまう」という点です。
LPICは、内容を理解していなくても、また実環境でのLinux使用経験がなくても、問題と解答を暗記さえすれば正答できてしまう問題が数多くあります。
次に挙げられるのが、「選択式の問題が多い」という点です。
LPICの問題は選択式か穴埋め式で、数としては前者の方が多く、感覚や運である程度の点をとれてしまう面があります。
こういったところが、「取得する意味がない」と言われてしまう所以です。
しかし、実際のところ、全く意味がないというわけではありません。
内容的には実務とマッチするものですし、評価している企業も数多くあります。
LPICの取得を検討している方の中には心配になっている方もいるかもしれませんが、必ずしも取得を諦める必要はありません。
「LPICは意味ない」と言い切れない!LPICを取得するメリット
「意味がない」といわれるLPICですが、取得には次の4つのメリットがあります。
体系的な知識・スキルが身に付く
LPICは、Linuxに関する技術力を認定する資格です。
取得を目指し学習を行っていく過程で、Linuxに関する知識やスキルを体系的に身に付けることができます。
Linux経験者であっても、頭が整理され、より理解が深まったり、知識漏れや勘違いが解消されたりするでしょう。
Linux初心者の場合、効率的にLinuxを習得できるでしょう。
技術力を客観的に証明できる
LPICを取得することで、Linuxに関する技術力を客観的に証明できるようになります。
Linuxはサーバー用のOSとしてよく使用されていますので、業務の幅が広がったりチャンスが増えたりするでしょう。
キャリアアップ・転職で有利になる
LPICは「取得する意味がない」と言われることがある一方で、評価する企業も数多く存在します。
LPICを取得すればキャリアアップや転職で有利になるでしょう。
報奨金をもらえる場合がある
一部企業では、LPICを取得した人に報奨金を支給しています。
「意味ない」とは言い切れないLPICとは
本記事では、「Linux(リナックス)」系の資格、「LPIC(エルピック)」について解説していきますが、まずはLinuxについて押さえておきましょう。
Linuxとは、「Windows」や「Mac」などと同様、OS(オペレーティングシステム)の一種です。
アメリカに本拠地をおく非営利団体「Linux Foundation」が開発したOSで、誰でも自由に使用、改変、再配布のできるオープンソースソフトウェアとして無償配布されています。
このLinuxは、WindowsやMacなどのように一般用のOSとして利用されることはほとんどありません。
サーバーやスーパーコンピュータ、デジタル家電、家庭用ゲーム機などのOSとしてよく利用されています。
特に多いのはサーバー用で、ITエンジニアとしてもサーバー用OSとして関わることが多いです。
Linuxについては下記記事でさらにわかりやすく解説しているので参考にしてください。
では、本記事のテーマ、「LPIC」とは何でしょうか。
LPICとは、「Linux Professional Institute Certification」の略称で、カナダに本拠地をおく非営利団体「Linux Professional Institute(LPI)」が運営する、Linuxに関する技術力を認定する資格のことです。
世界180ヶ国で展開されるグローバルスタンダードな資格で、日本においてはLPIの日本支部が運営しています。
IT業界で、Linux系の資格と言えば、このLPICの名前が真っ先に上がります。
また、Linuxはサーバー用OSとしてよく使用されていることから、LPICはサーバーエンジニア(サーバーの構築や運用を専門で担うエンジニア)に必須の資格として位置付けられています。
LPICの試験要綱
LPIC試験は次のような内容で実施されます。
試験科目
LPIC試験は、「level1試験」「level2試験」「level3試験」の3段階あります。
level1試験は「101」と「102」の2科目あり、その2科目に合格することでlevel1認定されます。
level2試験は「201」と「202」の2科目あり、その2科目に合格することでlevel2認定されます。
level3試験は専門分野ごとに「300」「303」「305」「306」と4科目あり、いずれか1科目に合格することでlevel3認定されます。
もちろん、全ての科目を受けることも可能です。
LPIC level1とlevel2については、下記記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
形式
LPICの試験運営を担当しているのは、イギリスに本拠地をおく試験運営ベンダー「ピアソンVUE(ピアソンビュー)」です。
LPIC試験は、ピアソンVUE公認のテストセンターにて、CBT(Computer Based Testing:パソコンに表示された問題に対してマウスやキーボードを使って解答する)方式で実施されます。
ピアソンVUE公認のテストセンターは日本の全国各地にあり、受験者は最寄りのテストセンターを指定できます。
試験時間はいずれの科目においても90分です。
出題範囲
LPIC試験の出題範囲は次の通りです。
level1試験:Linuxのアーキテクチャ、インストール、基本操作
level2試験:Linuxによるシステムの構築や管理、トラブルシューティング
level3試験:
300:混在環境 ※混在環境とは、種類の違うOSが混在している環境のこと
303:セキュリティ
305:仮想化 ※仮想化とは、システムの効率性や管理性を高めるために、実際の物理的なシステム環境とは異なるシステム環境を仮想的に作ること
306:高可用性 ※システムが停止することなく安定して使用できるかどうかの度合いのこと
日程
LPIC試験には、特定の試験日がありません。
基本的には自分のタイミングで決めることができます。
予約方法や受験可能日などの詳細はテストセンターによって異なりますので、個別に確認してください。
受験料
LPIC試験の受験料は、いずれの科目も16,500円(税込)で統一されています(2023年6月時点)。
例えば、level1認定を受けたい場合、「101」と「102」の2つの科目に合格する必要があるため、かかる受験料は33,000円(税込)になります。
有効期限
LPICに有効期限はないですが、独自に「有意性の期限」と呼ばれるものが定められています。
こちらについては押さえておきましょう。
LPICでは、資格そのものは1度でも取得すれば失効することはありません。
しかし、資格を取得してから5年間が有意性の期限として定められていて、その期限を過ぎてしまうと、現役の技術力を持っている証明として使用できなくなります。
資格の有意性を保持するためには、5年以内に同一の試験を受ける必要があります。
LPICとLinuCの違い
LPICと似ている資格に「LinuC(リナック)」があります。
LPICとLinuC、どちらもLinuxの技術力を認定する資格ですが、運営団体が異なります。
前述したようにLPICはLPI日本支部が運営しており、LinuCは日本の非営利団体「LPI-Japan(エルピーアイジャパン)」が運営しています。
実は、もともと日本でLPICの運営を行っていたのはLPI-Japanです。
しかし、2018年に新しくLPI日本支部が設立され、こちらがLPICの運営を行うことになりました。
その後、LPI-Japanが、独自にLPICをベースにして開発したLinuCの運営をスタートさせました。
LPICとLinuCには、このような背景があります。
LinuCは、LPICをベースに開発されているため、LPICと試験の構成・内容が似通ってはいますが、次のような違いがあります。
・出題範囲が日本向けに最適化されている
・Webサイトや試験問題の日本語が分かりやすい
・世界では通用しにくい
・(LPICで確認できるのはスコアと合否だけであるのに対し)スコアと合否、合格基準、項目別スコアを確認できる
LPICとLinuCの違いについては、下記記事でおすすめ理由を交えて詳しく解説しているので参考にしてみてください。
LPICを取得すべき人
「意味がない」との意見があるLPICですが、なかには取得すべき人も存在します。どのような人がLPICを取得すべきなのでしょうか。
レベル別にLPICを取得すべき人を解説します。
LPIC level1を取得すべき人
level1試験はLinux初心者向けです。
全くLinuxに触ったことのない方でも挑戦できます。
これから業務でLinuxを使う予定のある方や、個人的にLinuxに興味のある方におすすめです。
LPIC level2を取得すべき人
level2試験はLinux実務経験者向けです。
level1より難易度が高く、出題範囲も広いため、相当な勉強量が必要となります。
業務でLinuxを頻繁に使用している方や、サーバーエンジニアとして活動していくことを決めている方におすすめです。
LPIC level3を取得すべき人
level3試験はLinux専門家向けです。
サーバーエンジニアとして活動していくことを決めている方や、各専門分野でリーダーや教育者を目指している方におすすめです。
LPIC取得を目指す際に押さえておきたいポイント
ここまでで、実際にLPICの取得を目指そうと思われた方もいらっしゃるかと思います。
LPICの取得を目指す際は、次の2点を押さえておきましょう。
基本情報技術者の方が役立つ場合がある
IT業界にもさまざまな職種があり、職種によって求められる知識・スキルは大きく変わります。
そして、変化の激しい業界ゆえ、職種が何度も変わるということは往々にしてあります。
そのため、「Linuxを極めたい」「サーバーエンジニアとして活動していくことを決めている」といったことでなければ、必ずしもLPICを取得する必要はありません。
ITエンジニアになりたての場合であれば、IT領域の基本を網羅し、「ITエンジニアの登竜門」として評価されている「基本情報技術者試験」の方が役立つ場合もあります。
資格より実務経験が重要視される場合がある
IT業界では、「資格よりも実務経験を評価する」という企業が少なくありません。
LPICを取得したとしても必ずしも評価されるとは限らないことには留意しておきましょう。
LPIC学習でおすすめの参考書3選
ここでは、LPICの取得をこれから目指す方に向けて、おすすめの参考書を3つ紹介します。
1週間でLPICの基礎が学べる本
こちらは、LinuxやLPICについて何も知らない初心者が一番はじめに手に取る本として最適です。
LPICに挑戦する上での基礎固めを行うことができます。
Linux教科書LPICシリーズ
こちらは、LPICの教科書のような本で、出題範囲を全てカバーしており、解説がとても丁寧です。
資格対策だけでなく実務でもよく活用されています。
写真はlevel1に対応したものですが、level2とlevel3に対応のものも出版されています。
徹底攻略LPIC問題集シリーズ
こちらは、LPIC定番の問題集です。
問題数がとても多く、問題の傾向をつかんだり、現時点での実力を確かめたりする上で非常に役立つでしょう。
写真はlevel1に対応したものですが、level2とlevel3に対応のものも出版されています。
LPIC学習でおすすめの学習サイト2選
ここでは、LPICの取得をこれから目指す方に向けて、おすすめの学習サイトを2つ紹介します。
Ping-t
Ping-t(ピングティー)は、LPICやCCNA、AWS、オラクルマスターといったIT系資格の取得を目指す方のための学習サイトです。
「解説がとても分かりやすい」と評判で、多くのユーザーに支持されています。
LPICの学習ができるサイトの中で、際立って有名なサイトです。
LPI Learning
LPI Learning(エルピーアイラーニング)は、LPIが提供する学習サイトです。
LPICの運営元が提供しているため情報が最新かつ正確であると考えられます。
現在公開されている講座は、Linuxの基礎を学べる「Linux Essentials」と、「101」の対策ができる「LPIC-1 Exam 101」の2つで、それ以外の講座の公開が待たれるところです。
LPICのおすすめの勉強方法については、下記記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
「LPICは意味ない」は嘘!取得してスキルを身につけよう
この記事では、LPICの取得を検討している方に向けて、LPICの概要や「取得する意味がない」と言われる理由、学習方法などを紹介しました。
LPICは、「暗記で対応できてしまう」などといったことから「取得する意味がない」と言われることもありますが、一方で、Linux系の代表的な資格として位置付けられています。
業務でLinuxを使用する方やサーバーエンジニアとして活動していくことを決めている方などは、取得を検討してみる価値が十分にあるでしょう。
なお、LPICにはレベルと専門分野に応じて複数の科目があり、いずれにおいても有意性の期限が定められています。
計画的に取得していくことをおすすめいたします。