「IT資格はいらない」と言われることもありますが、実際のところは場合によりけりです。
未経験からエンジニアへの転職を志す人、将来年収600万円以上を目指す人などには、むしろIT資格を推奨します。
今回は、IT資格はいらないのかをテーマに、職種別の需要や必要ないと言われる根拠などを解説します。
IT資格を取るメリットや初心者におすすめの試験なども紹介するので参考にしてください。
いま取るべきIT資格については下記記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。
IT資格の必要性は分野による
ITエンジニアは、インフラエンジニアや開発エンジニア、Webエンジニアなどの職種に分類されます。
IT資格がいらないかは、どの職種を選ぶかによって異なります。
インフラエンジニアはIT資格があると便利
インフラエンジニアの場合、新人はマニュアルに沿って行う業務に従事するのが一般的です。
具体的には、システムの監視やトラブル対応、問い合わせ内容などの仕事に就きます。
そうした定型業務は一定の知識やスキルがあれば遂行できるため、インフラエンジニアへの転職にIT資格は有用です。
CCNAをはじめとするインフラ系のIT資格があれば8割がた内定が得られるといった話もあります。
CCNAとは?と疑問の思われた方は、下記記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。
プログラマーやSEにもIT資格は役立つ
プログラマーやシステムエンジニア(SE)など、システム開発に携わる開発系のエンジニアを目指す人にも、IT資格はおすすめです。
資格を取っておくことで、一定のスキルや業界知識があることを証明できます。
例えば、「Javaプログラマ」に代表されるプログラミング言語の資格、エンジニア業務の一連を知れる「基本情報技術者」などが便利です。
システムエンジニアとは?という方は、下記記事でわかりやすく解説しているので参考にしてください。
WebエンジニアにIT資格はいらないかも
Webエンジニアの現場では、とりわけ即戦力の人材が求められます。
そのため、未経験で転職する場合には、ポートフォリオ(試作したサイトやサービスなど)を示し、実務で使えることをアピールすべきです。
一方、Webエンジニアの実務スキルを体系的に扱う試験がないこともあり、IT資格は強いていらないといえます。
ただし、ポートフォリオの作成準備として、PHP技術者認定などを取得するのは十分に有意義です。
IT資格がいらないと言われる要因
IT資格がいらないと言われる根拠としては、以下のような事柄が挙げられます。
いずれもIT資格の必要性を完全に否定するものではありませんが、たしかに場合によってはIT資格がいらないこともあります。
IT資格がなくても実務に就けるから
IT業界において、IT資格は実務に就くための「免許」ではありません。
医師免許がないと働けない医師などとは異なり、資格を持たずに活躍するITエンジニアもたくさんいます。
とはいえ、ITエンジニアになるには、IT企業に採用されなければなりません。
採用選考でのアピールにIT資格は有用なので、取得する意義は十分にあります。
ITエンジニアには経験やスキルが重視されるから
ITエンジニアの人材価値を測る指標は、第一に実務経験です。
実務経験の質と長さが十分であれば、現場で活躍できる技能があることを証明できます。
よって、突出した実務経験があれば、IT資格はいらないです。
一方、実務経験に乏しい初心者の場合は、IT資格によって一定の知識やスキルがあることを示したほうが、採用される確率が上がります。
IT資格は必ずしも現場での活躍に直結しないから
残念ながら、一部にはIT資格を取ったものの現場で活躍できない人もいます。
IT資格は、試験で合格ラインを超えられる知識があれば誰でも取得できます。
しかし、ITエンジニアとして活躍するには、現場に入ってからの努力や適応力なども必要です。
むしろそうした「現場力」が人よりも優れていれば、活躍するのにIT資格がいらない場合もあります。
スキルはポートフォリオでもアピールできるから
自らの手がけたサービスやアプリケーションなどのポートフォリオでスキルを証明できるなら、IT資格は必ずしもいらないといえます。
ただし、採用現場でポートフォリオとIT資格のどちらが重視されるかは、職種によっても異なります。
Webエンジニアの採用ではポートフォリオが主流な一方、インフラエンジニアの場合はIT資格でアピールするのが一般的です。
IT資格を取得することのメリット
下記の通り、IT資格を取ればさまざまなメリットが得られます。
IT資格がいらないとお考えの人も、これを機会にぜひ取得を再検討してみてください。
スキルアップおよび現場での活躍につながる
IT資格を取得すれば、試験勉強の過程で特定の分野のスキルが向上するため、現場での活躍につながります。
活躍すれば当然周りの評価も上がるので、昇進や昇給も期待できます。
事実、年収600万円以上のITエンジニアは、74%がIT資格を持っているという調査結果もあります。
IT資格を取ってスキルアップし、より良いキャリアを築くというのが、昨今の業界におけるトレンドです。
参考:PR TIMES「【ITエンジニアの仕事選びや保有資格の実態調査】ITエンジニアが転職エージェントに求めること「ITエンジニアのキャリア・業界・技術への知見」が上位に!」
転職・就職活動でのアピール材料になる
IT資格を取れば、特定分野の知識やスキルを客観的に証明できるため、転職・就職時のアピール材料として有用です。
とくにほかの応募者が無資格だった場合は、ほかより自分の人材価値を高められます。
IT資格によって、採用担当者が想定していた以上の活躍が見込まれると評価されれば、より良い条件で内定される可能性も考えられます。
資格手当によって収入が上がることも
企業によっては、IT資格を取得することで月々数千〜数万円の資格手当がもらえるようになる場合もあります。
そのため、収入アップを希望する人にもIT資格の取得はおすすめです。
例えば、CCNAを取得することでもらえる資格手当の相場は月5,000円前後。
資格を持っているだけで年間6万円も収入が増えます。
未経験転職にIT資格がおすすめな理由
いらないと言われることもあるIT資格ですが、未経験からエンジニアへの転職を目指す初心者の人には、取得を強くおすすめします。
IT資格を取れば、以下のような恩恵が得られるからです。
知識やスキルを体系的に習得できる
一般的にIT資格の試験では、実務に直結する幅広い事柄が出題されます。
そのため、IT資格を取得すれば、実務的な知識やスキルを体系的に身につけられます。
またIT資格に挑戦する場合、出題範囲に沿って勉強すれば良いため、初心者でも何を学ぶべきか迷いにくいというメリットもあります。
採用担当者にスキルや意欲を示せる
IT資格を取るには、受験料や教材費などのお金と勉強時間が必要です。
そうしたコストをかけてわざわざ資格を取ることは、転職・就職の際、「ITエンジニアになりたい」という意欲のアピールにつながります。
またITツールの機能やトレンドは日々更新されるため、ITエンジニアとして活躍し続けるには、継続的な学習が大切です。
よって、IT資格を取るために試験勉強を継続できた事実は、IT人材としての将来性を示す材料にもなります。
ITエンジニアとしての適性を測れる
IT資格に挑戦することは、自分がITエンジニアに向いているかを判断する意味でもおすすめです。
学習する内容が面白くなかったり、実技が一向にできるようにならなかったりする場合、エンジニアは向いていないかもしれません。
一方、IT資格の勉強にのめり込めれば、ITツールを使った実務への意欲も高まるでしょう。
未経験エンジニアが取るべきIT資格
未経験からITエンジニアへの転職を目指す人には、以下のIT資格がおすすめです。
いずれかに挑戦することを、ITエンジニアのキャリアの第一歩としましょう。
1. ITパスポート
ITパスポートとは、仕事にITを利活用するための知識を広範囲に学べる国家資格です。
ネットワークやセキュリティなどの定番のIT知識に加え、AIやビッグデータといったトレンドの分野も学べます。
さらにITと絡めた経営全般(IT戦略やマーケティング、法務)についても学習できます。
よって、将来的な独立や経営層の仕事に興味のある人にも適切です。
難易度(合格率) | 簡単(50%前後) |
出題範囲 | ・企業と法務 ・経営戦略 ・システム戦略 ・開発技術 ・プロジェクトマネジメント ・サービスマネジメント ・基礎理論 ・コンピュータシステム ・技術要素 |
出題形式 | 四肢択一式 |
開催時期 | 随時実施 |
中小企業診断士トシゾーの資格勉強法では、ITパスポートに関する情報や勉強方法を紹介しています。
その他の資格情報も発信しているので、気になる方はぜひご覧ください。
2. 基本情報技術者試験
基本情報技術者は、ITエンジニアとしてキャリアを歩み始める人を対象にした国家資格です。
戦略の立案からシステムの運用まで、エンジニアの仕事に関する知識が幅広く試されることから「ITエンジニアの登竜門」と言われます。
初心者向けのIT資格ですが、合格率は20〜30%程度と比較的難しく、論理的思考力や学習意欲、胆力などのアピールにもなるでしょう。
難易度(合格率) | 普通(20〜30%ほど) |
出題範囲 | ・プログラミング全般に関すること ・プログラムの処理の基本要素に関すること ・データ構造及びアルゴリズムに関すること ・プログラミングの諸分野への適用に関すること ・情報セキュリティの確保に関すること |
出題形式 | 多肢選択式 |
開催時期 | 随時実施 |
3. CCNA
CCNAは、ネットワークエンジニアの実務に必要な基本的スキルを身につけられるIT資格です。
ネットワークおよびセキュリティの基礎を中心に学び、最適なネットワーク管理の技能が習得できます。
インフラエンジニアの現場でとりわけ重要視されているIT資格なので、取得すれば求人の選択肢が広がります。
なお、活学ITスクールは、CCNA合格率92%を誇る未経験者向けエンジニアスクールです。
文系・PCスキル0の人を含め、未経験からCCNAを取得し、ITエンジニアを目指せます。受講費用は無料なので、ぜひ気軽にご利用ください。
難易度(合格率) | 簡単(20〜30%ほど) |
出題範囲 | ・ネットワークの基礎 ・ネットワークアクセス ・IPコネクティビティ ・IPサービス ・セキュリティの基礎 ・自動化とプログラマビリティ |
出題形式 | 主に選択問題(一部、入力問題) |
開催時期 | 随時実施 |
4. LPIC-1
LPIC-1は、ITエンジニアが実務で用いるOSであるLinuxのスキルを証明するIT資格です。
Linuxを活用してネットワークを構成する基本的な技能が問われます。
サーバーにかかわる基礎知識を体系的に習得でき、主にインフラエンジニアの実務に活かせます。
実際、インフラエンジニアを雇用するIT企業には、新人研修でこのIT資格を取らせるところもあるなど、現場での必要性は十分です。
難易度(合格率) | 簡単(50〜60%ほど) |
出題範囲 | ・システムアーキテクチャ ・Linuxのインストールとパッケージ管理 ・GNUとUnixコマンド ・デバイス、Linuxファイルシステム、ファイルシステム階層標準 |
出題形式 | 主に選択問題(一部、記述問題) |
開催時期 | 随時実施 |
5. AWS 認定ソリューションアーキテクト アソシエイト
このIT資格では、AWS(Amazonのクラウドコンピューティングサービス)の基本スキルを証明できます。
AWSは、サーバーやデータベース、ソフトウェアなどをインターネット上で利用できるサービスです。
機器を購入しなくてもパソコン一台でシステムやインフラにアクセスできる手軽さから、昨今普及が進んでいます。
そのため、AWS 認定ソリューションアーキテクト アソシエイトは将来性の高いIT資格といえるでしょう。
難易度(合格率) | 簡単(50%ほど) |
出題範囲 | ・セキュアなアーキテクチャの設計 ・弾力性に優れたアーキテクチャの設計 ・高性能アーキテクチャの設計 ・コストを最適化したアーキテクチャの設計 |
出題形式 | 選択肢式と複数回答式 |
開催時期 | 随時実施 |
6. Oracle認定Javaプログラマ ブロンズ
Oracle認定Javaプログラマ ブロンズは、Java言語を使ったプログラミングの基本的な知識を証明するIT資格です。
業務システムやクラウドサービス、スマホアプリなどの開発における生産性向上に役立つスキルを学べます。
プログラマーに転職する際のアピールのほか、ポートフォリオ作成のための基礎学習にもおすすめです。
難易度(合格率) | 簡単(不明) |
出題範囲 | ・Javaテクノロジと開発環境についての理解 ・簡単なJavaプログラムの作成 ・Javaの基本データ型と文字列の操作 ・演算子と制御構造 ・配列の操作 ・クラスの宣言とインスタンスの使用 ・メソッドの作成と使用 ・カプセル化の適用 ・継承による実装の再利用 ・インタフェースによる抽象化 ・例外処理 ・モジュール・システム |
出題形式 | 選択問題 |
開催時期 | 随時実施 |
IT資格の難易度については、下記記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
まとめ:IT資格はエンジニアを目指す未経験者に役立つ!
未経験からエンジニアを目指す場合は、ぜひIT資格を取得しましょう。
IT資格を取ることで、基礎知識を効率よく習得できたり、転職時のアピールになったりとさまざまなメリットが得られます。
また昨今は、経験のあるエンジニアの間でも、IT資格を取って高年収を目指す流れが主流になりつつあります。
未経験のうちからIT資格の勉強に慣れておけば、将来上位の資格を取る際にも抵抗が少なくて良いでしょう。