ITエンジニアは、システムやITインフラを構築・設計することが役割です。職種はさまざまで、求められる専門知識やスキルも多岐にわたります。
厳しいともいわれるIT業界への転職を考える中で、高卒やIT未経験からでも目指せるのか気になる人も多いのではないでしょうか。結論からいうと、ITエンジニアは高卒からでも狙える職種です。
今回はITエンジニアが高卒から目指せる理由や将来性、未経験から転職するための方法について解説します。
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高卒からでもITエンジニアを目指せる理由
高卒でITエンジニアを目指せる主な理由は、以下の2つです。
- 学歴よりITスキルや適性が重要視される
- 人手不足により高卒でも採用される可能性が高い
高卒や未経験者からITエンジニアへの就職や転職は厳しいともいわれていますが、目指すことは十分可能です。
学歴よりITスキルや適性が重要視される
IT業界では、学歴よりもITスキルや適性が重視される傾向です。そのため、高卒であっても、エンジニアスキルが高ければ採用される可能性が高いといえます。
経済産業省の調査結果を見ると、企業がIT人材の給与決定の際に重視している項目は下表のとおりです。
項目 | 割合 |
---|---|
ITスキル (設計力・スピード・開発力) | 91% |
コミュニケーション能力 (マネジメント能力を含む) | 91% |
成果 | 87.7% |
年功 | 28.5% |
引用:経済産業省「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」
企業側が重要と回答したのは、ITスキルやコミュニケーション能力、成果の影響度が約9割と高く、年齢などについては約3割と少ない傾向です。採用時だけでなく、採用後の評価においても学歴はそこまで重要と考えられていないとわかります。
ITエンジニアとしてのスキルや適性があれば、高卒や未経験であってもキャリアアップを目指せると想定できるでしょう。
人手不足により高卒でも採用される可能性が高い
需要に対するIT人材が不足していることで、高卒以上可とする企業が増加していることも、ITエンジニアを目指しやすい理由の一つです。
効率化やコスト削減などのために、AIやIoTのようなデジタル技術を用いたビジネスモデルや、サービスを創出する取り組みは企業にとって不可避となっています。
2023年にIPA情報処理機構が発表した「DX白書2023」では、日本企業における約80%がIT人材不足であると回答しました。
また、2019年に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査(概要)」によると、2030年には約80万人のIT人材不足が予測されています。
人手不足解消のためには、専門学校や大学卒の人材のみでは補えず、高卒以上歓迎とする求人も増えつつあるのが現状です。
このような背景から、ITエンジニアの市場価値は高まりつつあり、高卒やIT未経験であっても採用される可能性が高いといえるでしょう。
参照:IPA情報処理機構「DX白書2023」
参照:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」
高卒からITエンジニアになるのが厳しいといわれる背景
ITエンジニアを高卒から目指すのは厳しいといわれる理由として、以下の点が挙げられます。
- IT業界はピラミッド構造になっている
- 経験が浅いうちは収入水準が低めである
- 客先常駐の場合がある
IT業界は一次請け、二次請け、三次請けと、ピラミッド構造でプロジェクトが進められることが多い業種です。
ピラミッドの頂点に位置する一次請けは大手企業が担い、抱えきれない仕事を下請け、孫請けに分散します。大手企業の場合は学歴を重視されやすい傾向にあるため、同じスキルであれば大卒を採用するところも多く、高卒では難しいとされています。
また、ITエンジニアは実力主義のため、経験が浅い間の収入水準は低めの傾向です。クライアント企業に常駐してプロジェクトを進める客先常駐となった場合は、周りのサポートが受けられないケースもあることなどが、厳しいといわれる背景だと考えられます。
とはいえ、さまざまなプロジェクトに参加することで経験値が増えれば、技術力や知識向上にともない高年収に恵まれるチャンスも期待できるでしょう。
高卒からでも目指せるITエンジニアの将来性
進化し続けるテクノロジーに対応できるITエンジニアの需要は、今後も増え続けると予想できるでしょう。
経済産業省が発表した「DXレポート」を見ても、日本企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要とされています。
DXとはデジタル技術を社会に浸透させることで、人々の生活をより豊かにしていくとの考えです。企業においては、老朽化したレガシーシステムからの脱却や、既存価値を取り払い革新的な技術などによって、新たな価値を生み出す取り組みが求められます。
近年ではSaaS、クラウドなどの外部サービスやツールを導入する企業が増えている中、先端IT人材が不足している傾向です。
DXを推進するための人材確保は企業の課題であり、状況の変化に順応して対応できるようなITエンジニアは、学歴を問わず将来性が大いに見込めます。
インフラエンジニアの将来性について、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
ITエンジニアの年収
ITエンジニアの年収は職種によっても異なります。システムエンジニアを例に挙げると、厚生労働省が発表している平均年収は約660万円です。
勤務先企業やスキルレベルなどによっても異なり、420万〜950万円ほどと、その差はかなり大きくなります。経験が浅いうちはエンジニアの平均年収よりも低い水準となり、19歳までの年収は約270万円です。
入社後すぐ高収入を狙うのは難しいものの、経験を積む中でスキルアップできれば、段階ごとに年収アップも期待できます。
参照:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「システムエンジニア(基盤システム)」
参照:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
高卒からITエンジニアを目指す人におすすめの職種
高卒からITエンジニアになるときにおすすめの職種として、以下の3つが挙げられます。
- プログラマー(コード作成・開発)
- インフラエンジニア(システム・ネットワーク構築)
- Webエンジニア(サイト開発)
3つの職種について、それぞれ詳しく紹介します。
プログラマー(コード作成・開発)
プログラマーは、SE(システムエンジニア)が作成した設計書にもとづき、ソフトウェア開発を行います。
仕事内容 | プログラミング言語を使用したアプリ、システム開発 |
---|---|
必要なスキル | プログラミング知識 (Ruby・PHP・Javaなどプログラミング言語の習得) |
向いている人 | ・論理的な考え方ができる人 ・知的好奇心がある人 ・集中力がある人 |
基礎的な作業を担当するプログラマーは、エンジニアの中でも目指しやすい職種の一つです。プログラミング言語の習得は不可欠ですが、なかにはコーディングの知識をもっていればOKとする企業もあります。
まずはプログラマーからスタートして経験を積めば、より上位職であるSEへキャリアアップする道も選択可能です。
プログラミング言語に加えて、プログラミング言語ごとに存在するフレームワーク知識のような専門的な知識やスキルを身につけてから就職活動するほうがよいでしょう。
プログラマーへ転職する方法は、以下の記事で解説しています。
インフラエンジニア(システム・ネットワーク構築)
インフラエンジニアは、情報システムに必要なネットワークの構築・運用などを担う仕事です。
高卒から目指すなら、インフラエンジニアの中でもサーバーエンジニアとネットワークエンジニアを目指すのがよいでしょう。
サーバーエンジニア | ネットワークエンジニア | |
---|---|---|
仕事内容 | サーバーの設計・構築・運用・保守 | ネットワークの設計・構築・運用・保守・監視 |
必要なスキル | コンピューター・OS・クラウド・データベース・ネットワークの知識 | ネットワーク・ネットワーク機器・ネットワークセキュリティの知識 |
向いている人 | ・責任感が強い人 ・コミュニケーションスキルが高い人 ・堅実な性格の人 | ・IT技術に興味がある人 ・コミュニケーションスキルが高い人 ・コツコツ作業するのが苦にならない人 |
サーバーエンジニアは、ITインフラの設定や維持など、基本的なソフトウェアの管理を担当し、ネットワークエンジニアは、ネットワーク機器やサーバーの設定などを行います。
近年ITインフラが不可欠となっているため、インフラエンジニア育成に力を入れている企業も多い傾向です。
数ヶ月間のビジネス研修を設けている企業もあるため、高卒未経験であっても働きながら知識を身につけやすいでしょう。
インフラエンジニアの仕事内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
Webエンジニア(サイト開発)
Webエンジニアには、フロントエンドとバックエンドがあり、アプリケーションやサイト開発を担当します。
バックエンドは内部処理やサーバーとの通信のような難易度高めの職種なので、まずはフロントエンドを選ぶほうが無難です。
仕事内容 | Webサイトやアプリケーションの設計・開発・運営 |
---|---|
必要なスキル | プログラミングの知識 (HTML/CSS・Ruby・JavaScriptなどプログラミング言語の習得) |
向いている人 | ・デザインに興味がある人 ・ユーザー目線で開発できる人 ・柔軟に対応できる人 |
フロントエンドは、HTMLやCSSなどの言語を用いてユーザーが見やすく使いやすいサイトを作ります。
Webエンジニアについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
高卒でIT企業に入社するために身につけておきたいスキル3選
IT企業への転職活動の前に身につけておきたいスキルは、大きく分けて以下の3つです。
- ITの基礎知識
- コミュニケーション能力
- 論理的な思考力
3つのスキルを踏まえたうえで、効率的に転職活動を行いましょう。
ITの基礎知識
まず、ITの基礎的な知識を習得しておくことが重要です。高卒や未経験からでも目指せる職種とはいえ、基礎的なIT知識をもっているかどうかは就職活動において企業側の大きな判断基準となります。
具体的には、以下のような基礎知識です。
- プログラミング言語
- コンピューター知識
- サーバー・OS・ネットワークに関する知識
- フレームワーク
プログラミングやサーバー、ネットワークについての基礎知識のうちいずれかの専門知識を身につけておくことで、就職・転職活動を進めやすくなります。
コミュニケーション能力
ITエンジニアにとって、周囲と円滑にコミュニケーションを取れるスキルは不可欠といえます。エンジニアは、チームメンバーや関係者と情報共有を行うことが必要です。
また、高卒からエンジニアとしてスタートする際には、発注元で常駐勤務となるケースが多く見られます。クライアント企業の従業員や、他のエンジニアと協力してプロジェクトを進めなければなりません。
このような場面でスムーズに意思疎通できる能力は、エンジニア業務を行う中で欠かせないスキルといえます。
論理的な思考力
物事を筋道立てて考える力を身につけておくことも、エンジニアを目指す際に大切なポイントです。
論理的思考力は、文部科学省も注目しているスキルの一つ。小学校でプログラミング教育が必須化された背景にも、プログラミング的思考力を身につけることにより課題を発見し、解決力などを高める目的があるとされています。
たとえば、問題が生じた場合においても論理的な考え方ができれば、障害の原因を突き止めたうえで、解決策を導き出せるのが利点です。
論理的思考力は、問題解決や説得に効果を発揮することから、ITエンジニアを志す者にとって必要な能力と考えられます。
参照:文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」
高卒・未経験からITエンジニアになる方法
高卒未経験からITエンジニアを効率的に目指すための方法を3つ紹介します。
- 転職エージェントを活用する
- スクールで基礎知識を学ぶ
- アピールできる資格を取得する
転職エージェントを活用する
転職エージェントを活用することは、転職活動において有効な手段の一つです。
転職エージェントとは、人材を求める企業と転職希望者をマッチングするサービスを指します。IT業界のプロフェッショナルから希望する求人情報を紹介してもらえるため、求める条件にマッチする企業が見つかりやすいのがメリットです。
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スクールで基礎知識を学ぶ
ITスクールを活用すると、企業にアピールできる基礎知識や専門スキルを効率的に身につけられます。
ITの知識は独学で習得することも可能ですが、不明点を素早く解決できないのがネックです。その点、スクールを利用すると、プロの講師に不明点を質問できるのは大きな利点といえます。
オンライン講座に対応しているスクールなら、いつどこにいても自分のペースで勉強できるため、スキマ時間を活用して無駄なく専門知識を習得しやすいのもポイントです。無理なく学べる環境なら、モチベーションを保ちながら効果的な学習が実現できるでしょう。
アピールできる資格を取得する
IT関連の資格を保有していると、企業へのアピールポイントになります。高卒に加えて未経験の場合、転職・就職活動時のアピールポイントに乏しい点が難点です。
たとえば、以下のような資格をもっていると、即戦力として活躍する人材としてアプローチしやすいでしょう。
資格 | 特徴 |
---|---|
CCNA (Cisco Certified Network Associate) | ネットワーク分野のIT専門資格 |
LinuC レベル1 (101・102) | OS、サーバー分野のIT専門資格 |
Oracle Certified Java Programmer, Silver SE 11 | プログラミング分野のIT専門資格 |
その他にも、ITエンジニアに必要な基礎知識を網羅できる基本情報技術者も、基礎知識を学べる試験です。
高卒であっても、ITスキルを証明できる資格を取得していることによって、学習能力を示すのに役立ちます。
まとめ:高卒から効率的にITエンジニアを目指すなら転職エージェントを活用しよう
IT人材不足の昨今、学歴よりスキルや適性を重視する企業が多いため、ITエンジニアは高卒でも十分目指せる職種です。
はじめから高収入を得るのは厳しいといえますが、スキルアップに応じて高年収を目指せるため、将来性は大いに見込めます。
高卒やIT未経験からの転職を狙うなら、転職エージェントを利用することも有効な手段です。
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