就職・転職を目指している方の中には、学歴と年収の関係について気にしている方も多いのではないでしょうか。
一般的には、学歴が高いほど平均年収も高くなる傾向にあるため、大卒の方が高校卒や専門卒に比べて年収は高くなります。
本記事では、大卒者の平均年収について解説します。
業種や企業規模別、年齢別の年収統計を紹介するので、就職・転職活動中の方は参考にしてみてください。
大卒者の平均年収
大卒者の平均年収は、学歴別に見ると大学院卒者の次に高い数字です。
ここでは、大卒者の平均年収および平均月収と手取り額、初任給のそれぞれについて解説していきます。
- 大卒者の平均年収
- 大卒者の平均月収と手取り
- 大卒者の初任給
大卒者の平均年収
大卒者の平均年収は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
362.8万円 | 392.1万円 | 294.0万円 |
厚生労働省の調査「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、大卒者の平均年収は「362.8万円」です。
男女別に見ると、男性は「392.1万円」女性は「294.0万円」と、他の学歴別統計と同じように男性の方が高くなる傾向にあります。
前年に比べると、男性の年収は「1.3%」、女性の年収は「1.8%」増加しており、全体としては「0.9%」増加しています。
上記の数字は、「所定内給与額」の平均値を用いて算出されています。
「所定内給与額」には残業代や各種手当が含まれていません。
賞与も含まれていないため、実際の大卒者の平均年収は上記の数字よりも高くなります。
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況:主な用語の定義
大卒者の平均月収と手取り
大卒者の平均月収と平均手取り額は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
平均月収 | 30.2万円 | 32.7万円 | 24.5万円 |
平均手取り額 | 22.7~25.7万円 | 24.5~27.8万円 | 18.4~20.8万円 |
「令和4年賃金構造基本統計調査」の年収を基準に計算すると、大卒者の平均月収は「30.2万円」です。
男女別に計算すると、男性は「32.7万円」女性は「24.5万円」となります。
一般に、手取り額は月収の75~85%程度になるとされています。
そのため、大卒者の1ヶ月あたりの平均手取り額は、およそ「22.7~25.7万円」です。
男性は「24.5~27.8万円」女性は「18.4~20.8万円」となります。
大卒者の初任給
大卒者の初年度平均年収と初任給は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
初年度平均年収 | 228.5万円 | 229.7万円 | 227.2万円 |
平均初任給 | 19.1万円 | 19.1万円 | 19.0万円 |
「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、大卒者の初年度年収は、「228.5万円」です。
男女別に見ると、男性は「229.7万円」女性は「227.2万円」となっています。
全体の年収と同じく男性の方が高くなる傾向にありますが、初任給の時点では、全体の年収ほどの差はありません。
初任給に換算すると、男女計「19.1万円」、男性「19.1万円」女性「19.0万円」となります。
出典:新規学卒者の学歴別にみた賃金|令和4年賃金構造基本統計調査
大卒者の業種・企業規模別平均年収
ここでは、大卒者の業種別・企業規模別に見た平均年収を紹介します。
大卒者の業種別平均年収
業種別平均年収(初年度)は以下の通りです。
順位 | 男女計 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
第1位 | 学術研究, 専門・技術サービス業:227.2万円 | 学術研究, 専門・技術サービス業:229.0万円 | 学術研究, 専門・技術サービス業:223.8万円 |
第2位 | 情報通信業:218.1万円 | 情報通信業:218.3万円 | 情報通信業:217.8万円 |
第3位 | 建設業:216.7万円 | 建設業:218.2万円 | 建設業:211.2万円 |
業種別の平均年収については、厚生労働省が令和元年に実施した調査「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」を参考にしています。
あくまでも大卒者の初年度平均年収なので、大卒者全体の平均年収はさらに上がるという点に注意してください。
同調査によれば、男女合わせて最も平均年収(初任給)が高い産業は「学術研究, 専門・技術サービス業」の「227.2万円」です。
続いて、「情報通信業」の「218.1万円」、「建設業」の「216.7万円」と続きます。
男女別に見ても、順位自体には違いがありません。
出典:令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:3 主な産業別にみた初任給
特に「情報通信業」は全体の対前年増減比が+3.7%と増加傾向にあり、今後も高年収が期待できます。
IT業界の年収相場については、以下の記事もご覧ください。
大卒者の企業規模別平均年収
企業規模別の平均年収(初年度)は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
大企業 | 213.1万円 | 215.9万円 | 209.7万円 |
中企業 | 208.6万円 | 211.1万円 | 205.2万円 |
小企業 | 203.9万円 | 206.0万円 | 201.8万円 |
企業規模別の平均年収についても、厚生労働省が令和元年に実施した調査「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」を参考にします。
同じく、新卒者の初任給がベースとなっているため、大卒者全体の平均年収は上記の数字よりも上がるという点に注意してください。
企業規模が大きいほど、平均年収も高くなる傾向にあります。
ここで「大企業」は常用労働者「1,000人以上」の企業、「中企業」は「100~999人」、小企業は「10~99人」の企業です。
出典:令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:2 企業規模別にみた初任給
大卒者の年代別平均年収
ここでは、20代~50代の大卒者の平均年収をそれぞれ紹介します。
なお、いずれのデータも厚生労働省の調査「令和4年賃金構造基本統計調査」を参考にしています。
20代
20代の大卒者の平均年収は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
20~24歳 | 233.6万円 | 235.1万円 | 232.1万円 |
25~29歳 | 265.2万円 | 272.8万円 | 255.9万円 |
20代平均 | 249.4万円 | 254.0万円 | 244.0万円 |
20代前半の間は、男女の年収の差は3万円程度とあまり大きくはありませんが、20代後半になるとその差は約17万円ほどと大きくなります。
20代の平均年収については、以下の記事もご覧ください。
30代
30代の大卒者の平均年収は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
30~34歳 | 304.9万円 | 319.3万円 | 279.2万円 |
35~39歳 | 353.9万円 | 375.5万円 | 307.2万円 |
30代平均 | 329.4万円 | 347.4万円 | 293.2万円 |
30代になると、大卒者の多くは年収300万円を超えます。
30代の平均年収については、以下の記事もご覧ください。
40代
40代の大卒者の平均年収は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
40~44歳 | 390.7万円 | 414.8万円 | 327.6万円 |
45~49歳 | 429.4万円 | 455.4万円 | 343.4万円 |
40代平均 | 410.0万円 | 435.1万円 | 335.5万円 |
40代の大卒者の平均年収は400万円を超えています。
50代
50代の大卒者の平均年収は以下の通りです。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
50~54歳 | 474.9万円 | 500.0万円 | 364.2万円 |
55~59歳 | 491.1万円 | 513.8万円 | 375.7万円 |
50代平均 | 483.0万円 | 506.9万円 | 370.0万円 |
60代以降は年収は下がっていくため、50代は大卒者の年収のピークです。
男性の場合、平均年収は500万円を超えます。
大卒者の学歴別平均年収・生涯賃金の違い
ここでは、学歴別の平均年収・生涯賃金の違いについて解説します。
大卒者の平均年収は、男女計で「362.8万円」です。
生涯賃金は、平均年収に大学卒業後から定年までの年数を掛けて算出します。
大学をストレートに卒業した場合、23歳から新卒として働くことになるため、生涯賃金を算出する式は以下の通りです。
362.8(万円)× = 15,600(万円)
大学卒の生涯賃金は、およそ1億6千万円です。
大学院卒
大学院卒者の平均年収は、男女計で「464.2万円」です。
大卒の平均年収(男女計で「362.8万円」)を約100万円上回る数字となっています。
男女別にみると、男性の平均年収は「478.4万円」、女性の平均年収は「404.3万円」です。
生涯賃金は同じく、平均年収に大学院卒業後から定年までの年数を掛けて算出します。
大学院修士課程をストレートに修了した場合、25歳から新卒として働くことになるため、生涯賃金の算出には以下の式を用います。
464.2(万円)× 41 = 19,032(万円)
大学院卒の生涯賃金は、およそ1億9千万円となります。
高卒
高卒者の平均年収は、男女計で「273.8万円」です。
大卒の平均年収(男女計で「362.8万円」)を約90万円下回る数字となっています。
男女別にみると、男性の平均年収は「297.5万円」、女性の平均年収は「222.9万円」です。
同じく生涯賃金は、平均年収に高校卒業から定年までの年数を掛けて算出します。
高校をストレートに卒業した場合、19歳から新卒として働くことになるため、生涯賃金の算出には以下の式を用います。
273.8(万円)× 47 = 12,869(万円)
高卒者の生涯賃金は、およそ1億2千8百万円となります。
高卒者の平均年収については、以下の記事もご覧ください。
専門卒
専門卒者の平均年収は、男女計で「294.2万円」です。
大卒の平均年収(男女計で「362.8万円」)を約70万円下回る数字となっています。
男女別にみると、男性の平均年収は「316.0万円」、女性の平均年収は「269.4万円」です。
同じく生涯賃金は、ここでは平均年収に専門学校卒業後から定年までの年数を掛けて算出します。
2年生の専門学校をストレートに卒業した場合、21歳から新卒として働くことになるため、生涯賃金の算出には以下の式を用います。
294.2(万円)× 45 = 13,239(万円)
専門卒者の生涯賃金は、およそ1億3千2百万円となります。
専門卒者の平均年収については、以下の記事もご覧ください。
大卒者の平均年収が高くなる理由
大卒者の平均年収は、専門卒や高校卒に比べて高くなるのが一般的です。
ここでは、大卒者の平均年収が高くなる理由を3つ紹介します。
- 能力の高さを評価されるから
- 大企業の求人が大卒を前提にしているから
- 専門性の高い知識を学んでいるから
能力の高さを評価されるから
大卒の方が年収が高くなりがちなのは、高校卒より大卒の能力を高く評価している企業が多いからです。
中途採用の場合は、それまでの実績や経験、資格などをもとに応募者の能力を測ることができます。
しかし新卒採用の場合、その時点での学生の能力を測れる要素は少なく、応募者を判断する材料として学歴が重視されているのです。
もちろん学歴や偏差値が高いからといって、仕事もできるとは限りません。
それでも、新卒の選考においては評価基準の1つとして重視する企業が多いため、結果として大卒の方が平均年収が高くなっています。
大企業の求人が大卒を前提にしているから
大卒の方が年収が高い理由の1つが、大企業の求人が大卒を前提にしているためです。
基本的には、中小企業よりも大企業の方が平均年収は高くなります。
年収が高くなりやすい大企業が大卒者を主に採用するため、必然的に大卒者の平均年収も上がっているのです。
専門性の高い知識を学んでいるから
大卒者の平均年収が高くなりがちなのは、大学で専門性の高い知識を学んでいるからです。
建築系の学部で高度な建築技術を学んだ学生や、需要の高い技術を研究した工学部の学生など、高度な知識を学んでいる学生は少なくありません。
高校卒では習得できない、専門性の高い知識を習得している学生が多いため、大卒者の方が平均年収が高くなる傾向にあります。
大卒者の平均年収についてのよくある質問
大卒者の平均年収についてのよくある質問を紹介します。
大学の規模や偏差値による年収の差はありますか?
大学の規模や偏差値によっても、年収の差はあります。
たとえば、日経グループの転職サービス「日経転職版」は、大学別年収ランキングを発表しています。
- 第1位:東京大学:1072.7万円
- 第2位:一橋大学:1052.5万円
- 第3位:東京工業大学:1003.4万円
出典:【連載 その希望年収、適正ですか?】大卒年収調査2022年版 出身大学別編 平均年収1000万円を超えたのは東大、一橋、東工大|日経転職版
上位に位置している大学の多くは、旧帝大や有名私立大学となっています。
こうした調査からも、大学の規模・偏差値が年収と関係していることが分かるでしょう。
同じ大卒でも年収に男女差があるのはなぜですか?
厚生労働省の実施したヒアリングによれば、男女間の賃金格差が生じる理由として以下が挙げられます。
- 管理職の女性が少ない
- 業務の難易度が違う
- 平均勤続年数が違う
- 諸手当の支給がない
出典:男女間の賃金格差問題に関する研究会報告書(総論)|男女間の賃金格差問題に関する研究会報告
こうした理由により、同じ大卒でも男女間に年収の差が生じています。
まとめ:大卒者の平均年収は専門・高卒者に比べて高い
本記事では、大卒の平均年収について解説しました。
大卒者の平均年収は「362.8万円」となっており、専門卒者や高校卒者に比べて数十万円~100万円ほど高くなっています。
大卒者の平均年収が高くなる理由は、大卒であることで能力の高さを評価する企業が多く、専門性の高い知識を習得していると考えられるからです。
また、大卒の中でも、特に偏差値の高い大学の方が年収は高くなる傾向にあります。
もちろん、同じ大卒でも年収には幅が生まれます。
学歴に縛られずに、自分の関心や得意分野をふまえて、スキルアップやキャリアアップを重ねていく必要があるでしょう。